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ー閃光ー116
しかし今日は、気付いた時には、こんなにもたくさんの人たちがここに集まって来ていたということだ。
雄介が記憶喪失だって、雄介のためにみんなが集まって来てくれているのだろう。そう思うと、こういう人間の繋がりっていうのは幸せなことなんだと思う。
和也と雄介なんかは、最初あんなにぎくしゃくしていた仲だったのに、今では一番の親友なのではないだろうか。裕実は元からああいう性格でもあるし、やはり友達想いなところがあるのだから、当たり前のように雄介のことを心配して和也と一緒に来てくれたのだろう。
朔望に関しては、雄介とは小児科医として同じ小児科の仲間でもあるのだから、表向きはあまり心配していないものの、きっと心の中では雄介のことを案じて和也たちと一緒に春坂へと来てくれたのだろう。
そして美里に関しては、やはり自分の弟なのだから、当然雄介のことが心配で、こうやって家に来てくれて雄介の世話をしてくれている。
今まで雄介がいろいろな人に優しくしてきた分、それが今、雄介に戻って来ているのかもしれない。そして雄介にはこうした温かい繋がりがあったということだ。
それを思った瞬間、俺は雄介の方へと笑顔で視線を向ける。すると、雄介の方も笑顔で俺に視線を向けてきた。きっと今の雄介でも、俺の笑顔に何かを感じてくれたのだろう。
雄介とはあまり会話はしていないけど、笑顔というのは、たとえ記憶喪失でも共通することなのだから、いいことなのかもしれない。
やっとそこで、俺は雄介と視線を合わせることができた。
こうして記憶喪失になってからの雄介というのは、やはりいつもの雄介とは違うのだから、さりげなく避けてきてしまっていたのだけど、もう記憶のない雄介から避けないと誓いたい。それに俺たちは夫夫なのだから、もう強く結ばれているのだし、記憶をなくしてしまったという理由だけで、簡単に離れるわけにはいかないのだから。
それを心の中で誓っていた俺は、きっとすっきりとしたような顔をしていたのだろうか、美里が、
「どうしたんですか? 急にすっきりしたような表情してるみたいですけど……」
と話しかけてくる。
本当に今の俺というのは、完全に表情にまですっきりとした感じが出ていたのだろう。
「今一度、雄介と一緒にいたいと思ってただけですよ」
その美里の言葉に笑顔を向ける俺。
「そんなに、雄ちゃんって、望さんからしてみたら、いい人なんですかねぇ……?」
きっと兄弟だからなのか、こう素直に認めないというところがあるからなのか、美里はこう疑う感じで聞いてくるのだ。半分はふざけて聞いてきているようにも思えるのだが。
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