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ー閃光ー117
「雄介っていう人は……本当に優しくて、明るくて、俺からしてみたらすごく頼もしくて……もし、俺がいなかったら、きっと雄介は女性にモテてますよ。 それに、家庭思いでもありますし、家事だって料理だって上手いんですからね。 俺っていう人間は今まで愛情っていうのを知らなかったんですけど、雄介には本当にたくさんの愛情をもらってきたんですよ……」
それを美里に向けて笑顔で言う俺。
本当に雄介にはそう思っていたから、美里に言ったまでだ。美里は雄介とは兄弟だから、雄介のいいところを認めたくないみたいなところもあるのかもしれないけど、俺からしてみたら、本当に十分すぎるほど、雄介からは愛情をもらってきた。
もしかしたら、他人にここまで雄介のことを好きだと言ったのは初めてかもしれない。
しかし美里の前では、こう堂々とそう言ったことが言えるのは何でなのだろうか。本当に無意識のうちに美里にはそう言ってしまっていた。目の前に琉斗という人物もいたのに、和也たちのことなんか全く視界に入れていなかった俺。
そこへ和也が俺と美里の会話へと入って来る。
「へぇー、やっぱり望は雄介のことそんなに好きだったんだなぁ……」
と半分茶化す感じで言ってきた和也だったが、今の俺はそんな和也の茶化しに関係なく、
「ああ、俺は本当に雄介のことが好きなんだからさ……。じゃなきゃ、結婚なんて全く考えないだろ? 本当に雄介のことが好きだから、俺は雄介と結婚したわけだしな……」
そんな風に真剣に雄介のことが好きだと言うことを、和也の前できちんと言ったことがなかったからなのか、和也の方が寧ろ目を丸くしていたようにも思える。
「……なら、いいんじゃねぇ?」
そう言って和也はさっき居たソファへと戻って行った。
きっと今は食べ終えたお皿を片付けにキッチンへ向かう途中だったのだろう。
「本当に、望さんが雄ちゃんのことを好きでいてくださるのなら、良かったですよ……ん……痛っ……」
その美里の言葉に、俺は思わず、
「だ、大丈夫ですか?!」
そう言い、席を立ってしまっていた。
「大丈夫ですから……ただ単純にお腹の中にいる赤ちゃんが、私のお腹を蹴っただけですからね。お腹の中にいる赤ちゃんも、望さんの言葉に返事してくれた証拠ってことなんじゃないかしら?」
その言葉に俺は安堵する。
本当にそういうことは分からないけど、お腹の中にいる赤ちゃんがお母さんのお腹を中から蹴るのは聞いたことがある。それがたまたま今だったのだろう。
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