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ー閃光ー119
とりあえず和也はそれだけを聞いて、何も言うことがなくなったのか、俺の方へと視線を向けると、
「ま、こんなもんなんだよなぁ……」
そう俺の方へと笑顔を向けて来る。
「だって、望の時もそうだったじゃんかぁ……でもさ、そのうち記憶が戻った時に色々と今までのことを思い出すことが出来るからいいんじゃねぇ?」
俺にそう言って来てくれる和也。
「まぁな……」
そんな答え方をすると、和也は、
「わりと、あっさりしてねぇ? 雄介が記憶喪失だっていうのにさ……」
「え? 別に……確かに最初はパニックだったけどさ、雄介がこんな風になって、俺の方がパニックになっててもしょうがないだろ? だから、逆に冷静でいた方がいいんじゃないかと思ってさ……」
「そういうこと?」
「ああ、そういうこと……」
俺の方は和也にそう答えると、
「あのさ……俺的には、まだ、色々と和也たちに聞きたいことがあるんだけど……」
そう言うと、和也の方は逆に何だか嬉しそうだ。
そんな表情に俺の方は目を丸くしながら、
「何で、今回、こっちに来たんだ? 俺的には言ったよな? 雄介はこんな風になっちまったけど、島にある診療所の方は和也たちに任せたってな」
「ま、そうなんだけどさ……やっぱ、俺達だって、雄介とは親友なんだから、雄介の様子も気になったし、今回、一週間だけこっちに来るつもりで来たからさ……そこだけは、許してくれよー……俺だって、流石に雄介のことが気にならない訳ないだろ? 寧ろ、裕実だって心配だったんだからさぁ……」
その和也の言葉に、「ま、そっか……」と思った俺。俺ももしかしたら、もし和也が記憶喪失になってしまったら、そうやって一週間だけでもいいから、春坂の方に様子を見に来たいと思ったからだ。
「あ、あー……まぁ、そういうことな……。んで、泊まるところとかは? サプライズで来てくれるのは嬉しいんだけどさ……自分たちで泊まるとことか考えてくれてるわけ? しかも、何で、俺達が住んでる場所が分かったのかな? それも、すっげー、謎なんですけどー。だってさ、このマンションはお前達には教えてない場所なんだぞ」
「本当、色々と聞いて来るのなぁ……ま、いいけど、とりあえず泊まるところは、朔望達は朔望達が住んでた家があっただろ? 二人はそっちでいいんじゃねぇのか? そんで、俺達の方は、望の家でよくねぇ? もう一つくらい部屋あんだろ?」
きっと和也は俺の家に泊まる気満々だったのであろう。寧ろ全くもって無計画で和也は俺達のところへ来たのかもしれない。
最初は気持ち的に和也たちが春坂に来ていたってことは嬉しかったのだけど、今の話を聞いていると、全くもって何も考えずに来ていたことに段々と俺はイライラとして来ているのは気のせいであろうか。いや和也が来てくれたことには嬉しさはあるのだけど、何も考えずに来ていたことにちょっとだけムカっ腹が立っているのかもしれない。
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