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ー閃光ー120
普通、そういうことを考えてから来るものだろう。しかし、和也の場合は本当に何も考えていないのが、嫌なところなのかもしれない。
「確かに、部屋はあるけどさ……ってかさ、サプライズで来るのは全然構わないんだけど……もっとこう計画的に来れねぇんだ? まず、俺の家を頼らないで、ホテルを確保して来るとかさぁ……」
「……ってか、なんで、お前にそういうふうに俺は言われなきゃならないわけ? こっちはさ、望と雄介のことが心配で、わざわざ診療所を休んでまで春坂に来たっていうのにさ……別にそれくらいいいじゃん! それに、一週間くらい俺達だってたまには休みが欲しいしさ、望達はちょいちょい休み取って春坂に来てただろ? なら、俺達だってそれくらいの休みもらってもいいんじゃねぇのかな?」
和也は俺のその言葉にイライラしてしまったのだろうか。和也にしては珍しく俺に反撃してきているような気がする。
だからなのか、その和也の言葉に俺は目を丸くする。そして、視線を逸らして、
「あー……だからだな……それは……」
「な、言い返すことができないだろ? なら、素直になれば良かったんじゃねぇのか?」
しかし和也という人物は、こんな性格だっただろうか。前まではこんなふうに喧嘩みたいなのはしたことがなかったような気がする。
俺が和也の言葉に黙っていると、裕実が来て、
「もう! 和也! 望さんをそう責めないでくださいよー。和也は望さんのそういった性格をよく知ってるんでしょう? なら、そんなに望さんを責めないでくださいよー」
そう裕実も無意識のうちに、俺の性格のことを言ってしまっているのは気のせいだろうか。
裕実の場合、俺のことをフォローするために間に入ってきたんだと思うのだが、半分はフォローで半分はフォローになっていない気がする。
「ま、そうだけどよー。ま、いいか……裕実がそう言うんだったら、もう望にはあまり言わないよー」
そう言って、今和也の前に立っている裕実の体をギュッと抱きしめる。
本当にこの二人というのは相変わらずだ。しかし、そこで裕実は俺の方へと視線を向けると、今俺と和也が話していた話題に首を突っ込む感じで、
「今回は、僕たちのわがままで春坂に来てしまって申し訳ございません。突然動き出してしまったせいで、今回、泊まる所も決めずに来てしまったこと、お詫び申し上げます。もし、あれでしたら、僕たちの方は今からでもホテルに行って泊まってきますので、気にしないでくださいね」
と、相変わらず丁寧な口調で、自分達の勝手な行動で申し訳ない気持ちを伝えてくる裕実。
さすがの俺も、そんなふうに丁寧に言われてしまうと、断れなくなってしまうのは気のせいだろうか。
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