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ー閃光ー122

「ま、そういうことなんだろうな。『火のない所に煙は立たない』っていうしな。元々、雄介は海で溺れた時に頭を打ちつけていた、っていうことになるのかー……」 「ま、そういうこと……。もっと、あの時に雄介に聞いておけば良かったんだろうけど……」  言葉を続けようとしたのだが、 「ま、過ぎてしまったことは仕方がねぇんじゃねぇのか? 過ぎてしまったことを悔やむより、今をどうにかした方がいいんだしな」 「あ……」  その和也の言葉で、俺は和也のことを見つめてしまっていた。その時、裕実も笑顔で俺のことを見つめてくる。何だか、本当に裕実の笑顔っていうのは、嘘偽りもないような笑顔だからなのか、なぜか安心できてしまう気がする。そう思うと、俺も思わず笑顔になってしまった。  しかし、この二人といると、今まで自分が悩んでいたのが馬鹿らしくなってくる。いや、確かに悩まなきゃいけない時期だったから悩むべきだったのだけど、それでも今まで気を張ってまで悩んでいたことだったので、そう思えたのかもしれない。 「しかし、望の時は、俺が望のことを抱いて記憶が戻ったんだけどさぁ……雄介の場合には、やっぱ、そうはいかないよな?」  その和也の言葉に、久しぶりに俺は顔を赤くしてしまっていた。 「あ、え? あー……」  そして、視線を完全に宙へと逸らす。  すると、そんな時、和也の隣にいる裕実が、 「えー?! そうだったんですか?!」  と大きな声で和也に向かい言った。しかも、まるで今まで知らなかったようにだ。 「ちょ、ちょ、ちょっと! 待てよ……ってか、それは前にも裕実に話したことがあっただろ? あー……なんだっけ? スキーに行く時の車の中で、それ話さなかったか?」 「あー、まぁ……そうだったような……?」  そう答えてしまったのは俺の方だ。  確かにスキーに行く車の中でそんなことを言ったかもしれない。 「……スキー?」  そこで和也が急に間を空けて、「スキー」という言葉を口にする。そして視線を天井の方へ向けているから、きっと和也はそれを元に考えてくれているのだろう。  しばらくして、和也は俺の方へ視線を向けると、 「なっ! もしかして、今までの思い出の場所に行ってみたら、雄介の記憶が戻るんじゃねぇのか? ま、まぁ……みんなでヤるっていうのもアリだと思うんだけどなぁ……」  と、最後の言葉に関してはにやにやしながら言っていたから、半分は本気で半分は冗談と言ったところだろうか。 「とりあえず、それは明日以降として、まずは愛のキスとかヤるとかっていうのは、先にできることなんじゃねぇのかなぁ?」  相変わらずそこだけはにやにやしながら言う和也。そこに腹を立てながらも、

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