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ー閃光ー123

「あのなぁ……マジで、俺的には、簡単にヤるだけで記憶が戻るんだったら、他にも記憶喪失の人は沢山いるんだから、その人たちだってヤったら記憶が戻っちゃうんじゃねぇのか? だから、科学的にも医学的にも、それは証明されてないんだから、ヤったからって記憶が戻るわけじゃねぇだろ?」  さすがの和也も、ここまで言えば分かってくれるだろう。そこに自分なりに安心した俺。だが、俺が考えていたこととは逆で、和也の方は、 「でもさ、やってみないと分からないことだろ? お前たちの場合には、もう何十年も体を重ねて来た仲なんだから、もしかしたら?! ってこともある訳なんだしさぁ……」  その和也の言葉に黙っていると、お風呂に入っていた朔望までもが出て来て、どこから聞いていたのかは分からないのだけど、 「え? マジ? いいんじゃない? みんなでスるのって、ワクワクしないか?」  と和也の背後に立って、和也の両肩を掴んでそう言ってくる朔望。 「な! そうだろー。やっぱ、朔望は分かってくれるよなぁ!」  あの二人の場合はいつもそうなのだから、そこは放っておいてもいいだろう。寧ろ無視でいいのかもしれない。だが、今まで黙って聞いていた雄介が口を開くのだ。 「私と望さんっていうのは結婚してるんですから、そういうことシてもいいんですよね? だけど、望さん、私のことを避けるんですよ。一昨日くらいに望さんにシたいと言ったんですが……その時は誤魔化されてしまって……」  その雄介の言葉に、和也も、そして朔望も、裕実も、勿論歩夢も動きを止め、雄介の方へと視線を向けるのだった。 「え? そうなの!?」  と目を丸くしてまで雄介の言葉に返事をしたのは、朔望だ。 「ちょ、ちょ、ちょー、え? 雄兄さん、ど、ど、どういうこと?」  そう驚きながらも朔望は雄介と話そうとしているようだ。 「私が記憶を失くしてしまった日の夜だったでしょうか? 確か、その日だったかと思いますが、私と望さんが結婚しているというくらいは指輪を見れば分かるので、分かってました。なので、私は望さんにシていいか? と尋ねたところ、こうなんていうのか……完全に望さんに誤魔化されてしまったんですよね」 「へぇー……そうだったんだ……。じゃあ、雄兄さんは兄さんとシたいっていうのはあるわけねぇ……」  そこまで朔望は雄介に向かい言うと、今度は俺の方へと視線を向けて、 「雄兄さんはシたいって言ってるんだけど……? 兄さんは雄兄さんとシたくないの? それって、おかしくない? 雄兄さんとは結婚したくらいに好きだった筈なのに、結婚してからは、雄兄さんと体を重ねたくはないってことだよねぇ? んじゃ、兄さんは雄兄さんのこと、好きじゃないってこと?」

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