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ー閃光ー124
そう責められてしまうと、俺の方はもう黙るしかない。
「黙るっていうことは、そういうことなんだよねぇ? 何も言うことがないんだったら、別に、記憶のない雄兄さんとでもいいんじゃないのかな? それって、記憶のある雄兄さんと記憶のない雄兄さんを差別しているっていうことになるんじゃないのかなぁ?」
その朔望の言い方に俺は一瞬目を見開きながらも、顔をうつむけてしまう。
確かに、朔望の言う通り、そこが記憶のある雄介とない雄介との差別なのかもしれないのだけど、俺にだって、そこは言い分があるからだ。
だからなのか、俺は今度しっかりと朔望たちの方へと視線を向けて、
「確かに、朔望の言う通り、記憶のある雄介とない雄介を差別しているのかもしれない。だけど、何だか、それは、記憶のある雄介に悪いような気がしてくるんだよなぁ……。記憶のある雄介っていうのは、すごく明るくて優しくて、それで、俺のことをすごく想ってくれてる人間だからな」
そんなことを俺がしっかりと言うとは思っていなかったのか、和也と朔望は目を見開いて俺のことを見つめていた。
一瞬黙ってしまっていた二人だったが、朔望は雄介の方へと視線を向けると、
「雄兄さん……兄さんはそんなふうに思ってたらしいんだけど……どうするの?」
そこはさすがに朔望も俺の意見を尊重してくれたのだろう。だからこそ、その後は雄介に話を振ったのだから。
その朔望の言葉に、雄介は今度黙って顔をうつむけてしまう。
「……記憶を失うって、こんなに悲しいことなんでしょうか? 私の方は、望さんに愛されてないっていうことなんですかね?」
その雄介の言葉に、今度は俺が息を飲む。そういう考え方を記憶のない雄介が持っているとは思っていなかったからだろう。
そこで裕実が今度は意見を言ってくるのだ。
「……今まで、僕は皆さんの意見を聞いてましたが、いろいろと気になってしまったんですよ。雄介さんに言いたいことがありましてね。確かに、望さんとは結婚したのかもしれません。ですが、今の雄介さんというのは、望さんの言う通りで、記憶のない雄介さんなんです。雄介さんの記憶が戻った時に、記憶のある雄介さんがそれを聞いたら、どんな思いをするのでしょうか? そりゃ、和也や朔望さんは体を重ねて愛を確かめる人たちかもしれませんが、雄介さんの場合、本当に望さんのことを大切に思っている方ですから、明るく振る舞いながらも、心の中では思いっきり傷ついているのかもしれませんよ」
そう裕実は笑顔で言いながらも、自分の意見をしっかりと言っていた。
本当に裕実には感心させられることがたくさんあるのかもしれない。
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