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ー閃光ー125

 さすがに今の裕実の意見に、朔望も和也も、そして記憶のない雄介も悩んでいるように思える。本当に裕実という人間は、そういう時にはズバッと言ってくれるタイプなのかもしれない。確かに、大勢でやるのは裕実にとっても恥ずかしく、あまり進んでやりたくはないというところなのかもしれないのだが、雄介のことを思って言ってくれているのだから、それもまたすごい能力なのだと思う。 「あ、まぁ……確かに、裕実の言う通りかもしれねぇよなぁ?」  どうやら和也は裕実の意見に賛同してくれているようだ。 「ホント、雄介って、本当に望想いだからさ……。もし、記憶のない雄介が望のことを抱いて、望の意見とかを聞かずにしてしまった場合、確かに記憶のある雄介からしてみたら、望のことを傷つけたっていう風になるのかもしれないよなぁ? そこは、裕実の意見に納得するところなのかもしれないな」  そう言って和也は裕実の方へと視線を向け、笑顔を向けるのだ。すると裕実はその和也の言葉に、 「はい!」  と自信に満ち溢れた感じで頷くのだった。 「朔望は、まぁ、まだあまり雄介のことを知らないのかもしれねぇけど、記憶のある雄介っていうのは、本当に望想いな人間なんだよ。例えば、雄介が望のことを抱きたいと思っても、望が嫌って言えば、しないしな。だから、記憶のない雄介っていうのは、望からしてみたらある意味別人みたいなもんで、浮気ではないんだけどさ……こう記憶のある雄介には悪い感じがしてくるもんなんだよなぁ……」  そこまで和也が言うと、裕実も頷き始める。 「そーなんです! 僕はそういうことを言いたかったんですよー! そうそう! 望さんからしても、記憶のない雄介さんとするとなると、やっぱり変な感じがして、そこはそこで、また望さんも浮気みたいな感じになると思うんですよねぇ。だから、記憶のない雄介さんとするのはちょっと違うのかもしれません……」  俺からしてみたら、二人にそうフォローしてもらえるのは本当に嬉しいことだ。裕実は元からそういう性格だから分かるのだけど、まさか和也にまでそこまでフォローしてくれるとは思ってなかったかもしれない。いや、和也がフォローしてくれるのは、昔俺が記憶喪失になったことを知ってるから余計なのだろう。 「……そういうことらしいよ。今は記憶のある雄兄さんの方が守られてるっていう感じなのかな? なら、とりあえず、今は兄さんのことを抱くのはやめた方がいいんじゃないかな? その方が無難だと思うよ」  最終的には朔望までも雄介に説得し始めてくれたようだ。そこに安心する俺。

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