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ー閃光ー133

「兄さん……体の方、大丈夫かな? それとさ……」  と朔望が俺に何か言おうとした直後だっただろうか、裕実が急に立ち上がり、何でだか裕実は朔望の口を押さえるのだ。 「それは、望さんに聞いちゃダメだって、言ってるでしょー!?」  と半分は何でだか怒ったような口調で朔望のことを叱ってくれているようだ。  そこに俺は首を傾げながら、入れてもらったスポーツドリンクを飲み干す。  確かに完全に喉も渇いていたような気がする。  やっと体中に水分が行きわったったような気がして来た。  だからなのか自然と体からは力が抜け、それと同時に俺は息を吐く。  が、しかし、それと同時に色々な記憶が蘇って来てしまったように思えるのだ。  お風呂場で俺の体が火照ってしまったことと、自分のムスコさんが勃ってしまっていたことと、体が暫くぶりに疼いてしまったことをだ。  とりあえず意識がしっかりとしてきた俺は体の至るところに触れてみる。  最初は胸、次はお腹、足と……自分のムスコさんにも触れてみたかったのだが、まだ和也達がいる環境ではさすがの俺では触れることは出来ない。 多分、自分のムスコさんの方はもう勃ってはいないだろう。  何でかそこにホッとしてしまう俺。  それから頭が更に冴えて来ると、この中に雄介の姿がなかったようにも思える。  そこに安心したような、寂しいような、何かこう複雑な気持ちになってしまうのは気のせいであろうか。  朔望と裕実が未だに言い合っている中、自然と和也と視線を合ってしまった俺。  和也の方は一瞬目をパチクリとさせたのだが、どうやら俺の瞳で何か和也に訴えているのが分かったらしく、 「やっぱ、雄介のことが気になるのか?」  と俺の瞳だけで今俺が思っていることをズバリ当てて来る和也。  一瞬俺の鼓動はドキリとしたのだが、逆に言えばこれが和也なのだから。  親友だからっていうのが一番高いのかもしれない。  本当に俺と和也とだと始めは同僚としか思えてなかったけど、それが呑みに出掛ける友達になって、それからは親友になり、本当に長い付き合いだからなのか、それとも和也は元から人間を見る目があるからなのか、本当に俺の心の中を完全に読まれているような時がある。 「え? あ、まぁ……」  俺の方はその和也の言葉に素直に答えるのだ。  そこはもう俺の方も和也のことを信用しているからこそ、少しずつ和也にも素直になってきている証拠なのであろう。 「雄介は……もう、寝てるよ……。俺からしても、いいんだか、悪いんだか……っていう状況だけどな」 「あ、そっか……」  と俺の方は変に納得してしまう。  あ、いや……納得っていう程ではない。  本当にその言葉には色々な意味が含まっている。  『ま、そうだよな……記憶が無い雄介なのだから……』とか『やっぱり、いないのか……』とかっていう意味も含まっているのだから。

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