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ー閃光ー140
そんな俺の姿に、裕実と和也は視線を合わせて微笑んでいた。
きっと二人とも、今までの一連の流れに満足しているということだろう。
「ま、まぁー、とりあえずっ!」
和也はそこまで言うと、裕実とは反対側のソファへと座り、
「あと一週間は俺たちはここにいるんだからさ、気長にいこうぜ!」
こう明るく言ってくれる和也のおかげで、俺の気持ちもだいぶ晴れてきたように思える。
さっきまでとは違い、自然と笑顔がこぼれるのだから。
「……とりあえず……気持ちの方はおさまったのか?」
半分冗談っぽく、半分は真剣に、そう言いながら和也は俺の方へ視線を向けて聞いてきた。
「あ……え? あー……」
いきなりそんなことを聞かれて、俺は顔を急に真っ赤にしてしまうのだった。
「……やっぱ、望はそうじゃなきゃなぁー!」
と、いつものように和也にからかわれる俺。
「あ、あー……」
さらに顔が真っ赤になり、思わずうつむいてしまう。
「ま、そういうことな……そんだけ、今の望は冷静になれてるってことだろ?」
その言葉に、さらに顔が赤くなりそうだったが、もうこれ以上赤くなる余地はないほど顔が真っ赤になっていた。
和也の場合、本当に驚くほど的を射たことを言ってくるから困る。
しかし、和也っていう人物は本当にすごいと思う。いや、裕実も雄介も、みんなそれぞれ仕事関係でも人間的にもすごい。
今だって普通に会話しているだけなのに、俺の心を穏やかにしてくれているのだから。
「じゃー! 寝ますか?」
そう言いながら、和也はその場で大きく伸びをした。
「そんで、望はソファで寝るのか?」
そう聞いてくる和也。
確かに、雄介が記憶喪失になってから、ずっと俺はソファで寝ていたのだが、今日は朔望も歩夢も裕実も和也もいる。
正直、寝る場所が足りない。
一部屋は客室用として使えるが、布団が足りないのだ。
「あー、じゃあ……和也たちはソファで寝たらどうだ? 俺は……とりあえず、雄介と一緒に寝るからさ」
その言葉に、裕実と和也は視線を交わし、裕実が目を見開いてこう言った。
「本当にそれで大丈夫なんですか?!」
「え? 多分な……記憶の無い雄介を信じてもいいんじゃねぇかと思ってよ……。
もしかしたら、いつも通りの生活を送った方が記憶が戻るのが早いっていうだろ? だから、そこに賭けてみようかと思ってなぁ」
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