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ー閃光ー142

 いつも以上に心臓の鼓動が早くなる。  そうだ、色々なことで俺の心臓っていうのは緊張状態でもあるからであろう。  もしかしたら雄介の記憶が戻っているのかもしれないということと、いつもの雄介なのかもしれないということとって、言葉は違えど一緒の意味だろう。  そう思いながら俺はゆっくりと雄介の方へと体を向ける。  それでも雄介の腕というのは俺の体から離れていかなかった。  やはり好きな人に体を包まれているっていうのは本当に幸せなことだ。  例え子供がお母さんに抱きしめられているってことさえも幸せなのだから。  そして大人になってからっていうのは、好きな人に抱き合いめられることが本当に幸せなことなのであろう。  雄介の腕は本当に温かくて逞しい。  消防士の時代もレスキュー隊員の時代も小児科医の時代も、そして今もこの腕で誰かの命を救い続けているのだから。  俺だって、雄介の腕に救われた一人だ。  いや、特別な一人なのかもしれない。  この腕で、雄介の心で、体で、むしろ雄介の場合には全体的で俺のことを救ってくれているような気がする。  だから俺の方も応えるかのように雄介の腕を手にするのだ。  そして完全に雄介の方へと視線や体を向けた俺だったのだが、雄介の方と言えば、瞼を完全に閉じ、瞼だけが動いているのが見える。  ただ単に俺の視力が悪くて雄介の瞳が開いてないかと思ったのだが、視力が悪くとも、少しは色のニュアンスで分かるのだから、完全に瞳は閉じたままのように思える。  今までの期待はどこに行ってしまったのであろうか。  そこにため息を吐く俺。  きっと今さっきの雄介は夢を見てて、寝言を言っていたのであろう。  しかもこのグッドなタイミングでだ。  一瞬、残念そうに項垂れた俺だったのだが、その一瞬で気持ちを切り替える。  ここ数日、雄介から逃げるようにしていた俺だったのだが、今さっき感じたのは雄介そのものだ。  確かに記憶で俺のことを覚えていない雄介なのだけど、体は雄介なのだから。  この逞しくて温かい腕は昔から変わりはない。  そして記憶の無い雄介だけど、腕っていうのは変わりがない。  目の前には雄介がいる。  ただ今の雄介は記憶が無いだけの雄介なだけだ。  そう思うと、気持ち的に俺の中では希望が湧いてくる。  久しぶりに雄介に近付けたからそう思えたのであろう。  本当に和也たちには春坂にきてくれて家に泊まってくれて良かったのかもしれない。  俺の心も体も救われたのだから。  しかし本当に和也は静かに俺の心の奥底にある扉を少しずつ開放してくれている人物の一人なのであろう。  確かに一番に心の扉をゆっくりと開かせてくれたのは雄介なのだが、二番手には和也なのかもしれない。

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