863 / 936

ー閃光ー151

 今日は和也が雄介と一緒に俺を迎えに来てくれて、良かったように思える。  偶然ではあったが、昔雄介が所属していたレスキュー隊が現場で救助活動をしているところを見かけたからだ。  それが、記憶を取り戻す一歩になるのかもしれない。いや、そのあたりはまだわからない。だが、今、その現場を目にした雄介が何かしらの反応を見せたのは、記憶喪失になってから初めてだった。  先ほどまではネオンが輝く幹線道路を走っていたが、今度は一転して、街灯がぽつんぽつんと点在するだけの住宅街に入っていく。今日は珍しく早い時間にここを通るからだろうか、多くの家から漏れる明かりが外を照らしていた。  普段、この道を通るのは遅い時間だから、その頃にはほとんどの家の明かりが消えている。  しばらくその閑静な住宅街を走らせていると、左奥に古い洋館が見えてきた。  本当に、俺が実家の前に来るのは何年ぶりだろう。  雄介と二人きりで一軒家に住んだり、島でみんなと暮らしたり、春坂に戻ってきた時にはマンション暮らしだったりしたから、実家に戻るのは本当に数年ぶりだ。  灯りがついているところを見ると、母親が家にいるのだろう。  車を家の前に停め、窓越しに自分の家を見上げる。  やはり、実家というのは生まれ育った場所だから、多少は感傷に浸りたくなるものだ。 「……ここは?」  突然、雄介がそう聞いてきた。  俺は少しの間、感傷に浸っていたため、ワンテンポ遅れて答えた。 「……え? ここは、俺の家だけど……」  瞬間的にそう返してしまう。 「望さん……の家でしたか……」  少し名前の呼び方に自信がなさそうだったが、どうにか俺の名前は覚えてくれたらしい。  だが、その後の言葉が少し気になった。  何かを思い出したかのように、雄介が言葉を繋いだからだ。 「ん? 何か、雄介、気になったのか?」  その変化に気づいたのは俺だけではなかったようで、和也も雄介にそう問いかけた。 「え? あ、どうなんでしょう? 頭の奥底から何かが出てきそうな感じはするんですけどね……」  まぁ、ここも雄介が以前住んでいた場所だから、そんな反応をするのも無理はないだろう。 「ま、雄介も俺と一緒に何年かここで住んでいたからな。記憶の奥底に何か引っかかるものがあるのかもしれねぇな」  俺もそう答えた。 「そうだったんですか? 私と望さんは……ここに一緒に住んでいた……んー……まだ、何もわかりません」 「別に焦らなくていいよ……ゆっくり思い出せればいいんだしさ……」  俺の中では、雄介の状況に対して少し楽観的になってきたように感じる。だが、記憶喪失というのは、ゆっくり気長に待つしかないのだから、楽観的でいるほうがいいのかもしれない。

ともだちにシェアしよう!