864 / 936

ー閃光ー152

 それから俺の方は、今住んでいるマンションへと向かうのだった。  俺は元からこの春坂に住んでいたのだから、どこに居ても道はわかる。  と、その時、雄介が急に何かボソボソと言い始めるのだ。 「……そこを右に曲がると……ビニ……?」  最後の方は俺の方まで雄介の声は届かなかったが、『そこを右に曲がると……ビニ?』と雄介が今言った言葉を繰り返してみる。 「あー!」  思わず車内で大声を出してしまった。  『ビニ』だけでは『ビニール』という言葉もあるから、一瞬わからなかったのだが、『そこを右に曲がると』が加わると、『コンビニ』ということなのだろう。  確かにそこを右に曲がればコンビニはある。 「雄介はそこのコンビニが気になるのか? 寄ってみるかな?」  最後の方は半分以上独り言のように漏らしつつ、その雄介が口にしたコンビニへと向かう。  そのコンビニの駐車場へと辿り着くと、一旦車から降りて、俺はそのコンビニを見上げた。  確か、ここは雄介と初めて俺の家にお泊まり予定で来る時に寄ったところでもある。  そしてその後、まだお互いをよくわかっていなかったからか、すれ違いが起きて喧嘩みたいな感じになったのだ。  このコンビニに来たのも、もう何年前になるだろうか。気持ち的には変わったように思えるが、全体的には変わっていないようにも思える。 「どうする? 中に入ってみるか?」 「え? あ、大丈夫ですよ……」 「そっか……」  コンビニに寄るのかと思ったが、どうやら違うらしい。  一瞬車から降りたものの、すぐに車へと戻る。 「だけど、収穫みたいなのはあったんじゃねぇ?」  車へ乗り込むと、和也が俺にそう声を掛けてきた。 「……ん?」 「だってさ、望の実家からすぐのところにあるコンビニの場所が、薄っすらだけど雄介の中に出てきたんだろ? 雄介にとって印象に残っていた場所だったってことなんじゃねぇのか?」 「ま、確かに……そうなのかもなぁ……」  その和也の言葉に、俺もさっきこのコンビニのことで思い出したことがあったからか、微笑むと再び車を走らせる。 「ま、そういうことだよなぁ? 雄介は覚えてないのかもしれねぇけど、望は覚えてるってことだもんなぁ。なら、その話を雄介に聞かせてやった方がいいんじゃねぇのか?」  和也の言葉に、俺は目をパチクリさせた。一瞬微笑んだのに、今度は動揺を見せる。 「ってか、普通にその話を和也が聞きたいんじゃねぇのか?」  そう疑うようにして和也へと振る俺。

ともだちにシェアしよう!