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ー閃光ー154
「あ、ああ……まぁな……」
俺はそこまで言うと、雄介の方へチラリと視線を向ける。さすがに運転中なのだから、ほんの一瞬だけだ。
すると雄介は、小さな声ではあったが、
「……温もり……ねぇ?」
と言っていた。
何かを思い出したわけではなさそうだったが、和也の誘導でその時のことを話してみて良かったのかもしれない。
確かに、俺にとってその時の思い出は嫌な記憶だった。けれど、その後、和也のおかげで雄介と仲直りする際に、素直に「温もりを忘れるのが怖かったから」と雄介に伝えたことがあった。それをきっかけに、雄介はその言葉を使うようになっていた。
おそらく、俺が雄介を好きになってから使い始めた言葉だったのだろう。雄介にとっては、とても嬉しい言葉だったに違いない。
俺にとっては恥ずかしい思い出だったけど、和也との会話で自然に……いや、雄介がそこのコンビニを気持ち的に思い出してくれたおかげで、この昔の話が出てきたのだから良しとしよう。
記憶喪失になっていたとしても、記憶の奥底には断片的なものが残っているのかもしれない。雄介がそうやって覚えていてくれたのなら、俺はいくらでもその時の思い出を教えてあげようと思う。
そう考えながら、再び家に向けて車を走らせた。
こうやって毎日のように、少しずつでも雄介の記憶が戻ってくれれば、それで十分だと思える。
家に到着すると、今日は三人で自分の家に入ることになる。
少し前までは、帰宅連絡を雄介に入れると、時間を見計らって玄関で出迎えてくれることがあった。しかし今日は雄介も一緒に行動していたわけで、家の中にいるのは裕実くらいだろう。
仕方なく玄関を鍵で開けると、途端に廊下をパタパタと早足で歩く音が聞こえてきた。目の前には裕実が立っている。
裕実と和也のカップルは、まあ、そういうことなのだろう。
そして裕実は和也の姿を見るなり、和也の首に両手を回して、
「おかえりなさーい! 今日は和也がいなくて寂しかったんですからね」
と、語尾にハートマークが付きそうな勢いで言った。
俺と雄介はそんな二人の様子を尻目に部屋の中へ入る。
相変わらず、部屋の中には今日もいい匂いが漂っていた。
雄介が記憶喪失になってからというもの、家に帰っても夕飯のいい匂いはしていなかった。だが、ここ数日、家に帰ると誰かがご飯を作ってくれているようで、本当に温かみを感じる。
きっと、これも雄介の人望なのだろう。
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