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ー閃光ー170
そう俺は思っているのだから、あまり美潮とは喋らないのかもしれない。
とりあえず白衣に着替えて、俺はソファへと腰を下ろす。時間まで少しあるからだ。
家のことは今の俺的には安心できる状況だろう。和也たちが来てくれたおかげで、本当に雄介のことを任せることができると言っても過言ではないのだから。
そこは心から安心できているのか、俺はソファの背もたれに完全に体を預けていた。そして天井へと視線を向け、思いっきり息を吐く。
その息の吐き方はため息でもなく、本当にいろいろな意味で吐き出していたのかもしれない。
和也たちが家にいて雄介のことを見てくれているということと、これから仕事が始まることへの気合いの意味もあれば、俺の目の前にいる美潮のことも含まれているのだ。そして顔をいつもの位置へと戻すと、
「よしっ!」
と軽く両頬を叩き、自分に気合いを入れる。
今日は和也たちのおかげで、仕事に身が入りそうだ。
もちろん普段だって仕事には気合いを入れているけれど、いつも以上に集中できると言ったほうが正しいのかもしれない。
そう、昨日や一昨日、いや雄介が記憶喪失になってからのここ数日、俺が雄介のことを気にしない日はなかった。
初日と数日は美里が俺たちのマンションに来てくれていて、新城と実琴、そして昨日から一週間ほどは和也たちがいる。一番頼りにできる人物がいることで、より安心して仕事ができる環境でもある。
そして時間になると、美潮と俺は仕事に向かうのだ。
昼休みになり、診察室から自分の部屋へ戻る途中だっただろうか。隣で歩く美潮が、俺に声を掛けてくる。
「今日の吉良先生……なんだか嬉しそうっていうのか……なんだか、ご機嫌って感じだったんですけどー?」
その美潮の言葉に、思わず俺は美潮のほうへと視線を向けてしまっていた。
「……へ? なんで!?」
「え? だって、いつもより笑顔で患者さんに接していたように思えたんですけどねぇ……? 俺の気のせいですか?」
まさか美潮にまでそこまで気付かれているとは思っていなかった俺。その言葉に、一瞬で顔が赤くなってしまっていたのだから。
「まさかとは思いますが、旦那さんが久しぶりに抱いてくれたとか?」
「……はぁ!?」
事情を全く知らない美潮の言葉に、俺の声は裏返った。しかも、まさかそんな言葉が美潮の口から出てくるとは思わなかったからだ。
美潮って、そういうキャラだったのだろうか?
とりあえず俺としては美潮の言葉を無視することに決めた。それに、俺はそういった下ネタがあまり好きじゃないし、まだ美潮に心を開いているわけでもない。いきなりそんな話をする気にもなれないしで、完全無視を決め込む。
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