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ー閃光ー172

 そして一番面倒くさいのは、話しかけてきただけでなく、隣にまで座ってきたことだ。どうやら、完全に俺と話をするつもりで来たらしい。  深いため息をつく俺。 「ま、雄介君のことで話したくてな……」  一瞬、目を見開きつつも、「雄介」という言葉に、息をゆっくりと吐き出した俺。 「雄介君の記憶喪失の方はどうなんだい?」  その言葉と同時に、中庭を見ていた裕二が俺の方に視線を向けてきた。やたら真剣な瞳で見つめられている気がするが、気のせいだろうか。 「え? あ……いや……別に……」  と、相変わらず素っ気ない返事をしてしまう俺。どうしても裕二の前では素直になれない。 「そういう意味じゃなくてだね……。確かに、私からすれば望も大切だが、今は雄介君も私の息子だからねぇ。親として、雄介君の様子が気にならないわけがないだろう?」 「ぁ……」  その言葉に、思わず声を漏らしてしまった。  すっかり忘れていたが、確かに俺たちは結婚したのだ。裕二からすれば、雄介は義理の息子。つまり、裕二にとっても他人ではなく家族になったということだ。  結婚するまでは、雄介は裕二にとってただの他人だった。しかし、今ではもう関係者であり、俺も雄介のことを伝えなければならない立場だ。それに、裕二は医学的な興味からも記憶喪失に関心を持っているのだろう。 「とりあえず……」  そう考えながら、中庭へ視線を向ける俺。裕二の顔を見て話すことがどうしてもできないのは、きっとまだ心を完全には許していないからだろう。 「雄介の記憶喪失は、まだ戻ってないよ。戻れば仕事復帰もできるだろうしな。とりあえず今は、和也たちが来てくれているから、雄介のことは任せてる」 「あ……確かに、それは朔望から聞いたな。一週間だけこちらにいるってね。もしあれなら、この期間だけ島の診療所をお休みにするのはどうかな?」  その提案に、思わず裕二を見た。まさか裕二からそんな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。 「だって、雄介君が記憶喪失の状態じゃ、望だって心配で仕事に手がつかないだろう? それなら、和也君や裕実君がいる方が気持ち的にも安心できるんじゃないか?」  その言葉に、俺は逆に悩んでしまう。

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