888 / 936
ー閃光ー176
和也が来てくれたことに、何だか安心できた俺。
今にも鼻歌を無意識のうちに口ずさみそうだ。それくらい、今の俺はご機嫌なのだから。
「ん?何で?!」と、自分に自問自答してしまう。
だが、どうしてこんなにも機嫌がいいのか。その理由を考えてみると、やはりすぐそばに和也がいてくれるからなのだろう。
そう考えた瞬間、体からふっと力が抜けた気がした。
和也って、何も考えていないように見えるけど、実は今まで俺のために色々と尽くしてくれていたんだと、今更ながらに気づく。
きっと、そんな和也がここにいるだけで安心できて、俺までご機嫌な気分になれたのだろう。
和也って、俺に対して押したり引いたりが上手い人でもある。
なのに、俺はどうして今までそんな和也に気づかなかったのか。
いや、和也と少し距離を置いた時間が、そういうことを教えてくれたのかもしれない。
そんなことを考えながら、俺はまた自然と笑顔になっていた。
さっき着替えに行った和也がロッカールームから出てくると、背後から近づいてきて、ソファの背もたれに両腕を預け、俺の顔を覗き込むなり、
「何だか、今日の望はご機嫌そうだなぁ」
そう笑顔で言ってくる。
俺は思わず、
「あ、いや……べ、別に……そんなことはねぇよ……」
と、口ごもりながら返した。
赤くなった顔を和也に見られたくなくて、顔を俯けてしまう。
その直後だった。
俺の顔をじっと見ていた美潮が、
「あー! って、何で、吉良先生……顔赤くしてるんですかー?!」
と、大きな声で突っ込んできた。
突然のことに、俺も和也も目が点になる。俺は思わず和也の方へ視線を送った。
和也からしてみれば、美潮のことをまだよく分かっていないからだろう。「何、コイツ!?」と思っているに違いない。和也の表情を見る限り、そう読み取れてしまった。
「え? アイツってい、いつもあんな感じなのか?」
「え? あ、ああ……いつも、あんな感じ……」
「やっぱ、今時の子って感じなのかな?」
「……みたいだぜ」
小さな声で和也とそんな会話を交わしながら、俺はため息をついた。
すると、美潮がまた、遠慮のない口調でこう言ってきた。
「しかし、吉良先生と梅沢さん? って本当に仲良さそうですねぇ。え? え? もしかして、お付き合いされているとか?」
何もオブラートに包まず、ストレートに聞いてくる美潮にため息をつきつつ、俺と和也はまた視線を合わせる。
和也は俺の視線に気づくと、
「ってか、さっき話聞いてなかったのか? ってか、お前って、俺等のこと何も知らないわけー?」
と、美潮に問いかける。
「だって、吉良先生は僕にはプライベートのことなんか話してくれませんもん。そりゃ、当然わかるわけがないじゃないですかー」
ともだちにシェアしよう!

