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ー閃光ー185
「あー……若干はそれあるのかも……」
と、ふざけたような笑いをしている和也。
やはり、雄介も俺も和也も、美里のことは若干苦手なのだろう。でも、完全に嫌いというわけではない。なんというのか、何か間違ったことをしたら叱られそうな感じがして、気持ち的にそういうところが苦手というのだろうか。
実際のところ、俺は美里に怒られた覚えはないような気がする。いや、叱られるというより、説教じみたことはあったような気がする。でも、それは俺が何か間違ったことを言ってしまった結果だから仕方のないことだった。とはいえ、やはりそういうところが苦手なのだろう。
「ま、そういうことか……」
と独り言を呟くと、俺から和也への話題は途切れ、運転に集中することにした。
「しかし、ホント、雄介の記憶喪失はいつ治るんだろうなぁ? やっぱさ、子供が生まれる前には……とは思うんだけどさ……」
その和也の何気ない言葉に、俺は敏感に反応してしまったらしく、思わず和也の方に顔を向ける。幸いにも車は赤信号で止まっていたところだったので問題はなかった。そして、すぐに正面に視線を戻し、
「どうなんだろうな……記憶喪失っていうのは、本当にいつ記憶が戻ってくるのか人それぞれらしいんだけどさ……まだ、雄介の場合、数日しか経ってないからなぁ……」
と答えた。
本当に、まだ数日しか経っていない。それなのに、もう何ヶ月も雄介は記憶喪失のままなんじゃないか、そんな錯覚をしてしまっていた。たぶん今の俺は、手術を受けている家族の気持ちと似ているのかもしれない。
しかし、雄介の記憶喪失のことで頭がいっぱい過ぎて忘れていたが、あと数ヶ月もすれば俺と雄介の子供が生まれる。俺はそのことをほとんど意識していなかった。
目の前の雄介のことで手一杯で、本当に子供が生まれることさえも忘れていたのだ。
そういうところ、父親として失格だと思う。でも、それでも今の俺は、雄介の記憶喪失のことばかりが頭を占めている。
「和也に言われて思い出したんだけどさ……もう、あと数ヶ月もしたら俺たちの子供、生まれるんだよなぁ……」
そう和也に話しかけた俺の言い方は、半分以上忘れていたことをそのまま表していたのかもしれない。
「え? もしかして、子供生まれるの忘れてたのか?」
そう聞かれ、
「え? あー……だってよ、俺の中で雄介のことで精一杯だったからな」
と答えた。すると和也は、
「ま、確かに、そう言われてみればそうなのかもしれねぇよなぁ……ある意味、子供の方は美里さんに任せるしか今はできないんだからさ……。そういや、前にテレビで言ってたことがあっただろ? こう、お腹の中に子供がいるのを疑似体験できるやつ。あれはどうしたんだ?」
と、興味深げに話題を変えた。
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