903 / 936
ー閃光ー191
そこで、俺も地べたに座り込む。
そうだ。今のこの状況はみんな一緒なのだから、慌てたって仕方がないと思ったのかもしれない。
「本来だったら、裕実と俺の分っと思って二セット入れておいたんだけど、逆に、それが、今回は役に立ったってわけだ……まぁ、今まで色々とあったからな。やっぱ、もしもの時に水やちょっとした食料があれば待ってられるだろ? 後は、トイレに行きたくなったら、簡易用トイレも持ち歩いてるしな」
そう言って和也は、ジッパーパックに入った簡易的な防災グッズをバックから取り出した。
「普通は防災グッズって、リュックに沢山詰めておくもんだろ? だけど、こういう時のために巾着とかジッパーパックに入れておくのもアリだぜ。必要最低限を入れておけば、例えばこういうエレベーター内で閉じ込められた時でも、簡易的な持ち物で役に立つってことだな」
和也が出してきたジッパーパックの中には、いろいろな物がちょろちょろと入っていた。ちょっとしたお菓子にマスク、簡易トイレ、絆創膏、ピンセット、ハサミ、爪切り、さらには綿棒まで入っている。
「とりあえず、水とカロリーメイトな」
そう言って、スマホに付いているライトを使いながらリュックの中から水とカロリーメイトを取り出す和也。
「あ、ああ……おう……」
俺は、あまりにも用意周到な和也に目をパチクリさせながら返事をするしかなかった。
「後はスマホの充電器も入ってるし、ま、とりあえず待つしかないかー」
「あ、ああ……」
和也はもう何も慌てる必要がないといった感じで、エレベーター内でリラックス状態になっていた。胡座をかきながら背を床につけ、天井の方を見上げている。
こういう時の和也は、本当に慌てず、冷静でいられることが多いんだよな。
ま、確かに、慌てたって仕方がない。のんびりと待つしかないってことか。
エレベーター内に閉じ込められて約三十分。時刻は、十九時半を少し過ぎたころだった。
その時、和也のスマホが急に鳴り始めた。
音が数秒で止まったところを見ると、メールのようだ。
「あ、朔望からか……」
そう言いながら和也はメールを開く。
「あー、やっぱ、そうなっちまうよなぁ。本当、裕実は心配性なんだからぁー」
独り言のように、俺にも聞こえるくらいの声で言う和也。
「『しかも、和也に電話してみないと今どこにいるか分かりませんからね』……本当にこのまま裕実に言わなくていいのか? って朔望が聞いてきてるんだけどさ……。朔望ならなんとか裕実のことをしてくれると思ってたんだけどな。なーんで、こういう時に頭の回転の良さを発揮しねぇんだよ……」
最後の方はきっと独り言になっていたのだろう。俺にはそう聞こえた。
ともだちにシェアしよう!

