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ー閃光ー199

「……逆に、それなら良かったです」  その和也の言葉に、俺の方は項垂れたのだが、どうやら裕実の方はそれで良かったようだ。  裕実の言葉に、俺は顔を上げる。  すると、俺の視界に入ってきたのは裕実の笑顔だった。 「だって、今日は色々な意味で僕がカレーを作ったんですからね……。たまには和也に、僕が作った料理を食べて欲しかったっていうのもありますが、望さんは雄介さんが記憶喪失になってしまって、きっと最近は雄介さんが作った料理というか、人が作った料理さえも食べてなかったと思うんですよ。それで、美里さんなら雄介さんと兄弟なので、同じものが作れるんじゃないかと思いましてね。それで、今日は作ってみたんです」  その言葉に、俺は目を丸くする。  自分の中では、もしかしたら地雷かもしれない言葉だったのかもしれないのだが、むしろそれが正解だとは思ってもいなかった。  やはりそこは和也なのかもしれない。  本当に和也は、そういったところで人の心を引き出せる力がある。しかもごく自然にだ。  そりゃ、俺も裕実も長年和也について行けているのだから。  しかも、何だか温かい雰囲気にしてくれるのも和也だ。  今日は停電というトラブルが発生して、今は懐中電灯の明かり一つでテーブルを囲んでいるのだが、その淡い光が、この温かい雰囲気をより際立たせてくれているような気がする。  ある時は喧嘩をしてしまうこともあるが、それ以外は本当にいい仲間だと俺は思っている。  本当に和也や裕実、そして雄介に出会えて良かったと思える。  長年一緒にいるからこそ気付けたのかもしれない。  それに、前までは本当に俺はツンデレと言われる人間だったのかもしれないが、雄介のおかげで大分丸くなってきた。だからこそ、今は和也や裕実の存在がそう見えてきたのだろう。 「あー! そうだ! これには裕実の愛情もいっぱい入っているんだよなぁ。んじゃ、もっと味わって食べないとかもー!」  和也のそんな甘々な発言に若干吹きそうになりながらも、このいい雰囲気に、久しぶりにホッとした。  雄介が記憶喪失になってから、何もかも一人で抱え込んできた俺だったのだけど、やはり和也たちが来てくれたおかげで肩の荷が減った。確かに島の診療所の方は気になるのだが、元から患者が少ないところなのだから、それはそれで何とかなるのだろう。今はそれさえも気楽に考えるようになってきた。 「和也……ありがとうな……」  小さな声でそう言うと、俺は立ち上がり、相変わらずそんなことを言うのが照れ臭かったのか、食器をシンクへと持って行った。  一瞬、和也と裕実が視線を合わせてアイコンタクトをしていたように思えたが、それはそれでいい。俺は一言、和也にお礼を言えたのだから。

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