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ー閃光ー206

「まぁ、俺も小さい頃から母親も父親もいなかったからな……」  裕実の気持ちもわかるところだ。  その時、急に裕実の表情が明るくなったような気がした。 「あ! 確かに、そうでしたよね……望さんも親御さんがずっといなかったんですもんね。でも、美里さんが本当の母親像って感じなんでしょうねぇ。ホント、琉斗君が羨ましいです」  確かにそうかもしれない。俺もずっと両親が家にいなかったから、本当の親からの愛情というものを知らない。だけど、これから俺と雄介は真剣に親になることを考えているのだから、急にもっと真剣に「親」というものを考えなければならない気がしてきた。  美里は、どんな風に琉斗を愛して、どんな風に愛情を注いでいるのだろうか。  裕実の一言で、急に俺も子供のことについて真剣に考えるようになった。  今までは「美里のお腹の中で俺たちの子供が育っている」という簡単な考え方だったのかもしれないが、あと数ヶ月もすれば、俺たちの子供が生まれる。  そのことについては、いつも雄介と真剣に話し合ってきた。子供を持つということは、何事にも責任を持たなければならない。  それを思い、急に俺は頭を抱えた。  それが行動に出てしまったのか、裕実が、 「急にどうされたんです? 頭まで抱えてしまって……」 「え? あ、ああ……まぁ、そうだよなって思ってな……」  それだけでは裕実には伝わらないだろう。ちゃんと説明しなければならない。 「あ、まぁ……今の裕実の言葉で、また忘れていたことを思い出しちまったんだよなぁ。もう、あと数ヶ月もしないうちに俺たちの子供が生まれるんだろ? だから、俺たちも美里さんを見習わないとなぁって思ってさ……」  俺は笑顔で裕実に向き直った。 「だけど……俺は親からの愛なんて知らないんだよ。それに、一番親からの愛を知っている雄介だって、今は記憶喪失だろ? 今さらながら、子供を育てる自信がなくなったというか……」 「……そういうこと、ありますよねぇ。子供が生まれる前に不安になるっていうことですよね。それは、みんな経験していることですから、大丈夫ですよ。そんな女性の方々、僕はたくさん見てきましたからね。それに、人間として当たり前なんじゃないですか? だって、望さんたちは初めて子育てに挑戦しようとしているんですよ。そりゃ、不安になるのは当たり前ですよ」  やはり、裕実は何十年も看護師をしているからなのか、心配事があっても、上手く解消してくれるような方向に導いてくれる気がする。  確かに、子供を産む人は誰だって、生む前に不安になるし、心配するものだろう。  たとえ自分のお腹に子供がいなくても、これから自分の子供が生まれると思うだけで、不安や心配になるのだから。

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