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ー閃光ー207

 本当に裕実の言う通り、初めてのことに挑戦しようとしているのだから、不安や心配になるのは当たり前のことだ。  よく考えれば、悩まなくてもいいのかもしれない。  人生って、なるようにしかならないのだから。  裕実と話をしていて、何だかその点がスッキリしたような気がする。 「裕実……ありがとうな……」  裕実の前で微笑みながら、こうしてお礼を言えたのは久しぶりのことだ。  確かに素直になってきたのは雄介のおかげでもあるのだけど、元々裕実という人間は、俺みたいな素直じゃない人間でも感謝の言葉を言いやすい雰囲気を持っているのだ。  ちょうど話が切れたところで、和也がお風呂から上がってきたようだ。  しかも頭を拭きながら、今にも口笛を吹きそうな感じで出てきた。鼻歌が聞こえてくる様子からして、ご機嫌なのだろう。それは懐かしい曲で、以前どこかで流れていたものだった。  俺は基本的にクラシックが好きなのだが、昔、よくテレビからその曲が流れていたことを思い出す。  その人たちの音楽は嫌いではない。むしろクラシックのように静かな曲調だからこそ、好きだったのかもしれない。  しかも、その曲が雄介をイメージさせるような感じだからなのか、最近、俺の中でそのバンドが再浮上してきているのだ。 「和也も、その人の歌が好きなのか?」 「え? あ、ああ……まぁな……なんか歌詞がいいじゃんか……」 「そうか……」 「ってか、この歌詞って、雄介の性格っぽくねぇ?」  その和也の言葉に、一瞬で顔を赤くする俺。  きっと、ちょうどその人たちの曲について頭の中で考えていたからだろう。 「あー、そうなのか?」  どうしてか、その曲について恥ずかしくなった俺は、和也から視線を外して答える。 「望も好きならいいかぁ……」  それだけ言って、和也はそこで話を終わらせた。 「では、今度は僕がお風呂に入ってきますね。」 「あ、ああ……」  そう答えると、今度は和也と二人きりになる。  何だろうか、さっきまでのおふざけモードとは違い、真剣な雰囲気が流れているように感じる。 「なぁ……望は今の雄介についてどう思ってるんだ?」  さすがは和也。こういうところはストレートに聞いてくるのだから。 「え? あー……」  俺は本当にそういう話が苦手で、完全に和也から視線を逸らす。 「じゃあ、質問を変えようか? 雄介が完全に記憶喪失なのは分かった。それで、そんな雄介にこれからお前はどうしようと考えてる?」  和也の真面目な質問だ。彼は真剣な瞳で俺を見ている。  だからなのか、今の和也には誤魔化しが効かないように感じてしまう。俺は――。

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