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第11話
俺たちが橘と裕貴に会っている間、千里が光希の看病を二つ返事で引き受けてくれた。
台所を覗くと、笹原がエプロン姿で台所に立っていて、橘とテレビ電話しながら、四苦八苦しながらもお粥を作ってくれていた。
笹原は恐妻家だ。
カミさんにまったく頭が上がらない。
出会ってから十七年。紆余曲折、遠回りばかりしていた二人だが、初恋を実らせ二人は夫婦として結ばれた。
「お帰りなさい」
「無事に橘の共犯者になってきたぞ」
「良かった」
「笹原も未知にお兄ちゃんって呼ばれたいか?」
「そりゃあまぁ、呼ばれたいけど。俺はあとでいい。千里を先にお姉ちゃんって呼んでもらえれば、それでいい」
「笹原、あのな」
「一人前のヤクザになるまでは本名は名乗らない。千里とそう誓ったんだ。遼成さん、心配してくれてありがとう。それよりもお粥の味見をして欲しいんだけど」
小皿によそったお粥を渡された。
「冷ましておいたから熱くない」
「誰かさんと違い、気が利くじゃないか」
スプーンでお粥を口に運んだ。
「卵粥か。具合が悪くなるとよく橘が作ってくれたな。旨い」
「先生がいいからね」
笹原が橘をちらっと見ると、
「これ見よがしにいちゃつくな」
スマホに向かい怪訝そうに声を掛けた。
兄貴が台所に入ってきて、後ろから橘を抱き締めると、項や白い喉元にまるで噛み付くような、濃密なキスをはじめた。
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