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第15話

「ずいぶんと若いカミさんを嫁にもらったと聞いたぞ。確か、27歳年下だっけ?水臭いぞ。なんで教えてくれなかったんだ?」 肩をぽんと叩くとギクッとして体を震わせた。 「さ、三回目なんで……」 手嶌の額からは汗がふきだした。 あくまで噂だが、九鬼のイロをもらい受けたとか。九鬼と言えば違法薬物だ。となるとさっきのは……。 「手嶌、カミさんと飼い犬に手を噛まれないようにくれぐれも注意しろ。邪魔したな」 組事務所を出て、すぐにスマホを耳にあてた。 「伊澤、聞こえていたか?」 ー昆、お前こそ水臭いぞ。なんで俺らに言ってくれないんだ?ー 「大人の事情ってやつだ」 ー俺らの口の固さはお前が一番よく分かっているだろうー 「文句は橘に言ってくれ。 それよりも伊澤、お前が言っていた例の二人の新入り、間違いない。九鬼の舎弟だ」 ーやはりそうか。手嶌は裏で九鬼と繋がっている、ということだな。昆、ありがとうー ぶちっと電話が切れた。 背後に刺さるような視線を感じ振り返ると、黒のロングワンピースを着た若い女が腕を前で組み立っていた。目が合うと蠱惑的な微笑みを浮かべながら、サイドにある深めのスリットから白い足をこれ見よがしに見せてきた。 それで俺を誘惑しているつもりか。 ずいぶんとまぁ、安く見られたものだな。 俺も笹原と同じで恐妻家だ。光希を怒らせたら血の雨が降る。 完全無視でエレベーターに乗り込んだ。 手嶌組が九鬼総業に乗っ取られるのも時間の問題だな。

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