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第16話

翌週。 「俺だけ動物園に行ってないんだぞ。颯人ばっかズルい。俺だって未知と一太と動物園に行きたいのに」 また言ってるよ。これで何度目だ? 当たり散らされる舎弟たちがかわいそうだ。 橘はまた何か企んでいるのか?昔からそうだ。表情が読めないから、何を考えているからさっぱり分からない。 「橘、どこに行くんだ?」 「一太くんを焚き付けてきます」 「未知じゃなくて?」 「えぇ。おじちゃんと動物園に行きたいって我が儘を言わせるんですよ。一太くんは我慢強い子です。ママを困らせてはいけない。悲しい顔をさせてはいけない。ママにはいつもにこにこと笑っていて欲しい。ですから、我が儘をめったに言いません」 「相変わらす策士だな」 「一太くんは遥琉にすぐに懐きました。遥琉も一太くんをすごく可愛がっています。あとは遥琉と未知さんをくっつけて、那奈さんに不貞行為の動かぬ証拠とともに離婚届を突き付ける。そのためなら手段は選んではいられません」 ふふふと不適な笑みを浮かべる橘。 それを見た瞬間、背筋がぞくぞくと寒くなった。 「おっかねなーー」 「何か言いました?」 「言ってない。一人言だ」 橘に睨まれたら一貫の終わりだ。 一番、敵に回してはいけない。

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