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第23話
一太は一番大きなペンギンのぬいぐるみをチラッと見たあと、選んだのはストラップが付いた一番小さいぬいぐるみだった。
もしかして俺に遠慮しているのか?
欲しいなら欲しいって言えばおじちゃん何でも買ってやるのに。
龍の小さい頃の姿に一太が重なって見えた。欲しいものがあっても俺に遠慮してなかなか言えずに我慢していたっけ。
一太の誕生日は確か………。
橘に目で助けを求めると、片手をパーにしたあと、両手を広げた。
5月10日か。よし、分かった。
俺は一番大きなペンギンのぬいぐるみを棚から取ると一太の前に差し出した。
「かなり遅くなったがおじちゃんからの誕生日プレゼントだ。ストラップのほうはママにプレゼントだ」
「いいの?ほんと?」
「あぁ」
「おじちゃんありがとー」
ぬいぐるみを受け取ると、一太がぼろぼろと泣き出した。
「何で泣くんだ」
「嬉しいからに決まってます」
おろおろする俺とは違い橘は怖いくらい冷静だった。
「そうなのか?」
一太が大きく頷いた。健気なその姿に胸を打たれ、涙が込み上げてきた。
「おじちゃんも嬉しいよ」
「遼成さん、泣くなら、拝島さんに一言もの申してからにしてください」
「いちいち言われなくても分かってるよ」
せっかくのいい雰囲気だったのに。水を差したのはやっぱり橘だった。
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