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第24話

「おじちゃん、がんばれー、がんばれー」 「ありがとう一太。おじちゃん頑張ってくるよ」 一太の熱烈な声援を受け出口に向かおうとしたが大事なことを思い出した。 「裕貴、これをやる」 ポケットから【い】と書かれたおにぎりを取り出して、裕貴に渡した。 「これは?」 「一太とた………」 ゴボン。橘がまた咳払いをした。 頼むからそんなに睨まないでくれ。話しを合わせろってな。言われなくても分かってる。 「一太の手作りだ」 「一太の?」 「あぁ、そうだ」 裕貴の強面の顔が緩んだ。 「もしかしてママと一緒に作ってくれたのか?」 一太はちらっと橘の顔を見上げたのち、満面の笑みで大きく頷いた。 「そうか。ありがとう一太。ひろおじちゃん嬉しいよ」 今度は裕貴が嬉し泣きをする番だった。 拝島は俺の顔を見るなりそそくさと逃げ出した。 未知が何度も頭を下げた。 「ママね、ありがとうって」 喋れない未知の代わりに一太が答えてくれた。 兄貴よりは顔は怖くないはずだ。そんなにびくびくして怯えなくてもいいのに。 未知と一太の一挙一動がかわいくていつまでも見ていられる。 まさに天使。俺らおっさんたちの癒しだ。

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