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第2話
「ミサキ、可愛い 、可愛い」
ソイツの言葉に吐き気がする。
でも熱っぽく囁かれるその声の、淫らさには身体は反応していく。
耳を舐められ齧られながら囁かれる。
厚い舌が、耳の裏から、穴まで差し込むように舐めるのも、薄いミサキの耳朶を大きな歯が甘く噛むのも、濡らされ嬲られるのがたまらなかった。
そんなところさえ、もうミサキの身体は感じるようにされてしまった。
毎日毎日、抱かれているからこそ。
どうやっても感じてしまうと教えこまれているからこそ。
いつのまにか全て脱がされた服、そしてそいつもまた服を脱ぎ捨てていて、触れ合った皮膚が熔けるように熱い。
その熱がもっと欲しくて、身体を擦り付けてしまうのは無意識で。
でも、それに唾を飲んでソイツが反応する。
耳を味わわれ、また執拗に乳首を弄られる。
背中から熱い肌に包まれ、溶かされながら、乳首の快楽の芯を摘みだされ、耳から甘さを教え込まれる。
ああっ
ああっ・・・
だめぇ
ミサキは動いてしまう腰を止められない。
快楽がそこへ集まるのだ。
欲しがることを知ってるソコか疼きだして、欲しくて欲しくて堪らなくなっているのだ。
ドクドク脈うち、そそり立ち、滴を垂らすミサキの擬似ペニスももちろんだが、濡れそぼりヒクヒク欲しがっている後ろの孔。
オメガの生殖孔が欲しがっていた。
オメガは男でも女でもない。
オメガはアルファに抱かれるための性なのだ。
オメガを見ればそれがわかる。
男よりも女よりもいやらしく、淫らな生き物。
ベータの男女でさえ、オメガには狂う。
ソイツの目が焼け付くように自分を見ているのにミサキは唇を噛む。
欲しがって、求めているのを見られてしまうのは屈辱で。
でも中がうずいて、ペニスが疼いて堪らない。
揺れる腰を止められない。
それに乳首にも指だけじゃないのがもう欲しい。
知ってしまっているからこそ、ほしくてたまらない。
口に含んで舐めて吸って、甘く噛んで欲しい。
指だけで焦らされ、イカされることも知ってはいるけれど。
でも。
嫌。
コイツは嫌い。
嫌い。
キライ。
「嫌い、キライ!!!大嫌い!!」
ミサキは怒鳴る。
指先で乳首をすり潰されて、耳を舐められて、そこだけでイカされそうになりながら。
「・・・俺は愛してる」
ソイツの苦い声がする。
でも、濡れそぼった孔に大きな指が差し込まれて。
そこを掻き混ぜられて、ミサキの中からさざ波のような快楽がやってくる。
中は。
やはり。
気持ち良い。
この指は番の指だと、ミサキの孔はミサキの心を裏切り、喜んでいる。
ミサキの腰も中も、その指を欲しがり動き出す。
ソイツは目を細めてそれを見ている。
ミサキの身体が自分を求めるのが好きなのだ。
「キライ・・・キライ・・大嫌い!!」
ミサキは叫びながら、夢中で腰を動かしていた。
指がいい。
気持ち良いところに当てたい。
もっと欲しい。
ソイツの指がそこを責めるのミサキの身体はタイミングを合わせて動いてもっとたのしもうとする。
その指の動きももう知り尽くしているから。
その間も乳首を甘く捏ねられ、耳や首筋を噛まれる疼痛に酔いしれて。
「ミサキ、イって?」
そう言われて、ミサキの身体は素直に従い、でもミサキの心は叫ぶ。
「キライ!!!」
でも。
ミサキの脳はその快感に焼き尽くされる。
ミサキはイく。
ミサキはその屈辱に泣く。
でも身体は悦んでいて、迸らせた白濁と、まだ痙攣して指を締め付けている孔がそうだと教える。
でも。
「愛してる。愛してるんだ」
うわ言のように囁かれて。
これからなのだと思い知らされる。
脚を担ぎあげられ、孔にその熱いソレをあてがわれて。
でも。
ミサキの身体はそれを欲しがっていて。
ミサキの腰が揺れていて。
自分から迎え入れようとしていて。
それが悔しくて泣くミサキの涙を優しくソイツの指が拭っていて。
数ヶ月に一度くるヒートの時にはコイツへの憎しみも忘れて自分から跨ることも思い出されて。
何もかもが憎いしくやしいのに、ソイツのソレで身体を満たしたい。
「ミサキ・・・。ミサキの身体が俺を欲しがるのはミサキの意志じゃないって分かってる。憎まれてるのも分かってる。分かってるから」
その声の苦さにだけ少し救われる。
コイツの苦しみだけがミサキの誇りを救う。
睨みつけ、ミサキは叫ぶ。
「大嫌い!!」
その声に確かに傷付く目に少しだけ、気が晴れる。
「でも。俺は愛してる。すまない。絶対に離さない」
そんな呪詛をささやかれ、そして。
その孔に楔を打ち込まれる。
逃がさないための杭。
捕らえるための槍。
その熱さと大きさに、ミサキの身体は歓喜して、ミサキの心は引き裂かれる。
いやっ
いやぁ
ああっ
ミサキはさけぶが、その声は次第に甘く濡れて。
ミサキの意識が剥ぎ取られるほどに、言葉は違うものになっていく。
激しく打ちつけられる音。
獣のように喰らうアルファの。
ベータなら腹を割かれ死ぬような。
でも。
ミサキはオメガなので。
アルファの全てを受け入欲しがるオメガなので。
そして、その相手は番だからこそ。
いいっ
いいっ
欲しいっ
ミサキはもう叫んでいた。
理性と自我を手放して。
ソイツはそんなミサキを苦しげにみつめ、傷ついた獣みたいに唸った。
「すまない・・・愛してるんだ・・・」
その言葉は。
届くことなどないとわかっているのに。
でもまた激しく打ち付けられて、ミサキは歓喜の叫びをあげる。
「ミサキ、ミサキ、ミサキ!!!」
何度も何度も名前を呼ばれて、深く深く抉られ、身体の芯から壊される。
それに夢中になってミサキは痙攣しながら腰をカクカクと動かし、自分の中にあるソレを夢中で味わうのだ。
獣になったアルファとオメガが、互いをむさぼり始める。
そこに。
心など。
あるはずがないのだ。
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