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第3話

ミサキがオメガになったのは10歳。 学校で行われた遺伝子検査でオメガに覚醒したことが発覚した。 この数ヶ月、熱っぽかったり、だるかったのは身体が作り替えられていたからだとわかった。 「妊娠はまだ無理だが、子宮はもう出来ているし、性交は可能だね」 直ぐに連れていかれたセンターで医師は言った。 性交? ミサキは怯えた。 アルファが何なのかは知ってる。 チラリと見た事もある。 もちろん、子供達の多くは親がアルファや兄弟がアルファでない限り、アルファに接することなどほぼない。 アルファはとても少く、そして支配者だからだ。 大多数のベータとは住む世界が違うのだ。 アルファは大きくて、強くて、美しく、賢い。 何もかもがベータとは違う。 人間以上の存在なのだと語られていて、そのアルファのパートーナーになるべく存在しているのがオメガなのだと教えられていた。 アルファは一人のオメガを選び、死ぬまでそのオメガを愛するのだと、4つ上の姉が夢見心地に語っていた。 姉はそこに憧れをみていたのだろう。 ミサキはそんなの興味なかった。 ミサキは多少内向的なところもあったが、仲良しの友達とは騒いで遊ぶ子供だったし、少年らしい遊びも大好きだった。 アルファになることには憧れた。 強くて。 なんかわかんないけど、凄くて。 カッコイイのだ。 ある日突然、アルファに変化することを男の子なら夢にみる。 そう、男の子。 なぜアルファやオメガに女性が変化しないのかは、どういうわけか追求されることはない。 アルファやオメガについての研究は基本的に禁忌とされているからだ。 その禁忌は。 アルファの意志であることは明確だった。 とにかくミサキは、アルファにはなりたかったが、オメガにはなりたいと思ったことはなかった。 10歳ならまあ、それなりには知ってる。 セックスについて。 オメガはアルファとセックスする生き物なのだと知っていた。 男と女がすることをアルファとオメガはして、オメガは子供を産むのだということも。 アルファの子供がアルファとして産まれるとは限らない。 生まれる子供のほとんどがベータなのも、ベータのカップルと変わらない。 アルファやオメガが生まれるのはベータのカップルとの確率と同じだ。 が、アルファの子供を妊娠出来るはオメガだけ。 オメガを妊娠させられるのもアルファだけ。 だからオメガはアルファのために存在しているのだ、と教えられていた。 「オメガなら10歳から性交は可能だからね。番をもういつ作ってもいい」 診察の後、カウンセラーからも言われて真っ白になった。 セックスもまだ遠いことだと思っていたけれど、もうアルファとセックスできると言われて。 「番」などと言われて。 それは、そう、女の子みたいにアルファにペニスを刺されるのだ、とも分かっていて。 それは最近疼き始めた後ろの孔とも関係あるのだとも分かっていて。 ミサキは怖くなって大声で泣いた。 でも、その日の内に「ヒート」を抑えるためのカプセルを埋め込む手術まで行われた。 オメガにとって大切なことだから、と。 ヒートが起こっては遅いから、と もう、ベータの。 「男」ではないのだと思い知らせられるのは。 10歳のミサキにはショックが大きすぎた。 昨日まで「少年」だったのだから。 だが。 そんなミサキの様子にも、 オメガのためのセンターは慣れた様子で対応してきた。 とりあえず鎮静剤を打たれて、センターにしばらく保護されることにされた。 カウンセリングや、身体についての知識のために。 両親にはオメガとは何かのレクチャーが始まっていて、息子がどうなっていくのかを教えられていた。 オメガ。 オメガになってしまったなら。 もう。 ベータの世界には戻れないのだ。 ミサキが生まれて初めて知った絶望だった。

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