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第4話

転校が決まった。 まだ外見のオメガ化はそこまで進んでいなかったが、これからは「少年」では通らなくなる、と言われたからだ。 オメガはオメガだ。 男でも女でもないし、当然ベータではない。 住む世界が変わるのだ、とおしえられた。 それを教えてくれたのは、顔半分が焼け爛れたオメガがカウンセラーだった。 その顔に最初は怯えたけれど、オメガであるその人だけは、話してみればミサキの苦しみを理解してくれた。 ミサキの苦しみを受け止めてくれた。 「ミサキ、どうしたい?何がしたい?」 そう聞いてくれた。 ミサキはオメガになってもまだやれることがあるのだと、その言葉で教えてくれた。 「小説家になりたい」 ミサキは小さな声で言った。 ミサキは本を読むのが好きで。 自分でもノートにお話を書いていたからだ。 夢を口にしてみて気付く。 まだあった。 ミサキの世界が変わってしまっても。 まだやりたいことがあった。 「じゃあ、まずは小説書こうか」 カウンセラーの先生は笑った。 先生の笑顔は美しくて醜かった。 それが好きだと思った。 このセンターのカウンセラーの先生はこれから行く先の学校でカウンセラーをしてると言った。 夏休みの間は臨時でここのカウンセラーもしている、と。 オメガのカウンセラーは貴重なのだ。 大抵のオメガはアルファに囲われ、社会に出ることがないからだ。 ミサキはオメガでも仕事をしている先生にあこがれた。 オメガでも。 夢は諦めなくていい。 それに先生は番がいなかった。 番がいた跡、項に歯型はあったけれど、「番はいない」と断言したから、恐らく死んだのだろうと思った。 そういう形であれ、アルファから解放される可能性がある、というのはミサキには救いになった。 もちろん、後にそんなことは無いのだと思い知らさせることになるのだけど。 「番は作った方が良い」 先生はそう言った。 「オメガにはヒートがある。とても辛い。それを助けてくれるのはアルファだけだし、番を作らないと、そこにたまたまいたアルファに確実に犯されることになるからね。番を作れば君のフェロモンは番にしか効かなくなる。それだけでも君の安全は全然違う。望まない妊娠も避けられる」 先生の言う通りなのはわかった。 妊娠だなんて。 先日まで少年だったミサキには恐ろしすぎた。 身体に埋め込まれたヒートを起こさせないカプセルは、強力なものだ。 妊娠も防ぐ。 だが確実に寿命を縮めるほどキツイもので。 でも、それは未成年の番のいないオメガの番を見つけるまでの身を守るために必要なものだった。 基本的にオメガとアルファについての研究は禁忌だが、オメガのヒートをコントロールする研究や、フェロモンを抑える研究については行われている。 が、未だに完璧な対策はない。 カプセルでヒートを避けられるが、寿命を縮めるため、20歳までには外すことになっており、それまでに番を見つけなければ、効き目に個人差や体調が左右する不安定な抑制剤にオメガは頼らなければならない。 「ヒートは辛い。とても辛い。だから、番を作っておくんだ。その方がいい」 先生は真剣に言った。 そして、オメガの身体についても教えてくれた。 まだヒートは来なくても、なんだか火照る身体の癒し方も。 「もう君の身体はアルファを求めてるからね。ヒートが無くても、身体が欲しがる時もある。そういうときは自分で慰めてやるといい。誰かアルファを見つけてやってしまうのもいいけど、一度やってしまうとめんどくさいのがアルファだからね」 先生はこれというアルファが見つかるまではセックスしない方がいいと忠告してくれた。 アルファはオメガに執着する。 番に対する執着は凄まじいものだけど、一度抱いたオメガにも、それなりに執着する。 色々厄介なことがあるから止めておいた方が良い、と先生は言った。 そんなことを言われても。 アルファとセックスなんて。 まだミサキにはそんなのかんがえられなかった。 まだ自慰だってミサキはしたことなかったのだ。 でも、先生はミサキに自慰を教えてくれた。 それはペニスを使ってするのではなく、後ろの孔でするものだった。 「後ろの孔を使うんだ。ペニスでも気持ちいいけど、ここじゃないとオメガは最終的には満足出来ない」 先生は言ったのだった。 そう。 何日目かのカウンセリングの時だった。 「やり方を教えるよ、覚えなさい」 先生は真面目な顔で言った。 何故面談室にベットがあったのかを理解した。 でも先生の態度が淡々としていて、そして、先生がオメガだから、同じ身体だから。 怖くはなかった。 でも恥ずかしい。 真っ赤になってズボンを指示された通りに脱いでベッドに座り、言われるがまま脚を開いた。 後に倒れるようにして座り、脚を開くのだ。 後ろの孔が見えるように。 先生は機械的に両手に手袋をはめてミサキの脚の間に座った。 先生の確かめるような目がミサキの小さなペニスを見つめる。 そして、先生の手がそっとペニスを摘みあげ、そこの もっと下にあるものを見ていた。 ミサキの孔を。 その視線にミサキはさらに赤くなる。 自分のソコを見た事がなかったのに人に見られているのだ。 「見てごらん」 先生は言った。 先生のもう片方の手には手鏡があり、そこにその孔が映し出されていた。 ミサキはショックをうける。 そこは。 そう。 もう。 ただの排泄孔ではなかった。 友達のお尻は見た事がある。 風呂に入った時に。 もちろん、じっくり見た事はなかったけれど。 でも、ミサキのそこは、もう違った。 違っていた。 ピンク色のソコは小さな窄まりではなく、縦割れて、そう、昔一緒にお風呂に入っていた姉の。 幼い女の子の無毛のソコに似ていた。 生殖器だった。 オメガは。 男ではない。 それを理解した瞬間だった。 まだオメガらしい身体になってないから。 オメガ独特の身体、発達した乳首、柔らかくでも薄い身体つき、柔らかく小さな尻や、微かに隆起した胸。 そういうのにはなってないから。 だから。 まだ自分が少年なのだと思ってた。 でも。 ソコは。 アルファを受け入れる場所はもう、出来上がっていた。 ミサキは泣いた。 でも、先生はやめてくれなかった。

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