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第8話
「ミサキ、また学校で」
先生が言ってくれた。
今日からミサキは一旦家に帰る。
オメガになった事が発覚して、そのための【教育】のためにセンターにいたが、もう精神的に大丈夫だと判断されたのだ。
先生が言う通り自殺する子もいるのだ。
貴重なオメガ、支配者のアルファのための存在であるオメガを国は失うわけにはいかないから、このセンターが存在している。
でも、ミサキにとってはここにユキ先生がいたことが幸運だった。
数少ないオメガのカウンセラー。
新学期からミサキが通うその学校にユキ先生もいる。
本来学園の勤務なのだ。
それが嬉しかった。
ミサキはもう先生の焼け爛れた顔も好きだった。
先生はアルファに焼かれたのだと教えてくれた。
番になるのを断ったアルファに焼かれ、殺されそうになったのだと。
これはあまりない事だ、とは言っていた。
アルファはオメガを傷つけることを嫌うから。
それも本能の一つだから。
オメガの選択をアルファは尊重する
雌が雄を選ぶ動物のように。
それでも、執着が本能を超えるバグったアルファは存在するのだ。
先生はオメガ達に教えているのだ、その身をもって。
「アルファと安易にセックスするのは危険だからね。セックスしたオメガにアルファは執着する。番ほどではないとしても。そして番にしたいと思えば他のアルファと殺しあってでもオメガを手に入れようとする。もちろんセックスしてみてから番にするかを決めたいというのは理解できるよ、オメガとして。だって、一生の問題だからね。でも、その相手が危ないアルファかどうかなんて分からないからね、よく考えて」
先生はそこまで教えてから、ミサキ達オメガを学校へと送りだすのだ。
ここからは自己責任。
ここからはミサキ達オメガは大人扱いになるからだ。
アルファと結婚することも可能だ。
流石に子供はせめて16までは産まないことになっているが、明日にも番が出来て結婚することもできる。
カプセルを取り出し発情期を迎えて、アルファとセックスして、項に番の印を刻まれたならそうなる。
まだ10歳なのに。
でも、オメガだと判明してから教えこまれたみだらなこと。
それだけでもう、自分が普通の少年ではなくなった、とオメガ達は知っている。
親たちもセンターからの研修で、子供達がどうなったのかを教えられている。
親の役目はもう終わったとも教えられる。
もう、オメガはアルファを見つけてそのアルファと生涯暮らすのだ。
送られる全寮制の学校はそのための場所だった。
建前は、転化したばかりのオメガを保護し、転化したばかりの未熟なアルファを指導するということになっているけれど。
まあ、確かに。
転化したばかりのアルファはベータの子供達と一緒にはいろんな意味で居られない。
新しい身体には凄まじいパワーがあることも良く分かっていないし、その身体になったことによる欲望にもまだ対処できないからだ。
彼らは化け物なのだ。
だが、アルファは強い本能でオメガを求め、それゆえ、オメガを傷つけることはない。
そしてオメガの身体はベータより遥かに耐久力があり、アルファのパワーに耐えられる。
10歳のオメガでも、大人のアルファとセックスが可能だ。
ベータなら確実に死ぬその行為を受け入れることが出来る。
それがオメガなのだ。
だからこそアルファはオメガを求める。
アルファはオメガの年齢に拘らない。
アルファがオメガに求めるものはオメガであるかどうかだけなのだ。
そう、だからこそ。
アルファはオメガにだけはとてもあまい。
基本、攻撃的、支配的な彼らがオメガには違う。
自分のオメガでなくても、オメガには態度が変わる。
本能なのだ。
下手に執着を煽らない限りはオメガを尊重する。
だが。
だが。
それが全てではない。
それこそが、ユキ先生は、オメガ達に気を付けるように言った理由なのだ。
どれほどオメガに甘く、優しげでも。
アルファは獣なのだ。
オメガを喰らいたい生き物なのだ。
それをよくよくわかって。
その中から自分に相応しい番を探せ、と。
それがユキ先生の教えだった。
その意味をユキはよくよく知ることになる。
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