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第11話

目を覚ましたミサキの前にはユキ先生がいた。 ユキ先生に抱きつき、ミサキは泣いた。 ミサキは病院の病室にいた。 先生は「1人で出歩くな」と言う言いつけを破ったミサキを叱らなかった。 ミサキの無事を喜んでくれた。 無事。 無事なのか? 受けた暴力への恐怖は残っていたし、何より、助けられたけれどショックな事もあったのだ。 「ミサキ、落ち着いてからでいいんだけど・・・」 ユキ先生が考えこみながら言う。 なんとなく言われる前にわかった。 あのアルファだ。 あのアルファの話だ。 ミサキは首を振る。 助けてくれた。 それは本当で感謝してる。 恐らく、酷い殺され方をしただろうミサキを襲った犯人への同情もない。 でも。 でも。 怖い。 アルファは素手だった。 でもあんなに血が。 何も聞きたくなかった。 何一つ。 「そう・・・」 先生はミサキの髪を撫でた。 そこで話は終わった。 ユキ先生のその指が優しかったから、ミサキは甘えた。 「先生・・・して欲しい」 先生にシてもらうことばかり考えていた。 ユキ先生は困ったような顔をした。 もちろん綺麗な方の半分で。 でもミサキが泣きながら縋り付いたから。 病室の部屋のドアに鍵をかけて、ミサキをベッドに横たえてベッドサイドに立ったまま、優しくソコを弄ってくれた。 ミサキの孔を。 「自分でしなさいって言っただろ?」 少し叱るような口調だったけど、先生の指は優しくて。 ミサキは簡単にイってしまった。 優しく何度かイカしてくれると、先生は後始末をしてくれた。 先生にはなんの興奮もないのが悲しかったけど、先生が大好きだとミサキは思った。 「ミサキ、オメガはオメガの相手になれない。オメガにはアルファが必要なんだ」 先生にまた言い含められた。 ミサキはまた泣く。 分かってるから。 「でも。見守ってるからね。心配だよ、ミサキ」 先生の言葉が優しかった。 ミサキは学校が始まるまでの数日病院にいることになった。 家に帰るのが怖かったからだ。 家の近所で襲われたのだから。 でも、ミサキは先生に会えたおかげで安心した。 それに。 襲った人間は死んだのだし。 誰も言わなかったけど、ミサキはそれを確信していた。 先生が帰る時にはミサキはすっかり落ち着いていた。 ミサキは深く眠った。 ユキ先生が優しく抱きしめてくれている、そんな夢だった。 髪を撫でる。 優しい優しい指。 ずっと撫でていて。 ミサキはそう思った。 でも。 ふと思う。 先生の指はこんなに大きかっただろうか。 それに。 先生の指はもっとあっさりしてる。 先生にはミサキへの欲望はないのだから。 だって先生はオメガだし。 その指にはミサキへの執着があった。 優しいでも、どこまでもミサキをとらえて離さないような。 でも。 その指にミサキの本能が反応していることに、ミサキは怯えた。 「欲しい」 身体がそう言っていて。 匂いが。 あのホッとするのに、こわい匂いが。 ミサキは目を開けた。 暗い病室に獣の目が光っていた。 オオカミの目。 ミサキの上に覆い被さるように、でもミサキに体重を少しもかけないよう慎重に、ソイツがミサキを見下ろしていた。 忘れもしないあのアルファだった。 金色に見える目がミサキを見ていた。 あの飢えたような、愛しいような、綺麗なものを見ているかのような目。 しばらく見つめあった。 そしてミサキは悲鳴を上げようとした。 アルファは明らかにミサキの病室に侵入しているからだ。 口を塞がれた。 大きな大きな手でミサキはさらに怯えた。 「すまない、すまない、脅かすつもりはなかったんだ。怖がらないで、お願いだから怖がらないでくれ」 アルファは必死で低い声でそう言ったのだった。

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