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第22話

ミサキがオメガになって4年。 学園にまた新しいアルファ達がやってきた。 アルファはオメガと違い、毎年ほぼ同じ時期にベータから孵化する。 繭化と呼ばれる身体が急激に変わるひと月を経て、孵化と言われる状態を経てアルファになる。 その詳細は不明だ。 アルファについての情報は伏せられていることも多い。 だが孵化した時には知識も体格もほぼ大人並になっている。 もうその前の少年とは全く違う存在になっている。 そして、彼らは自分達が何なのかを良く知っている。 それからはアルファとして戦うことだけに生涯を費やす。 だが18までは学園で調整する。 急激に変わった身体と心を整え、そして、そこでオメガを得るために。 というのは建前で そこでの番探しがメインなのは誰でも知っている。 ほとんどのアルファがこの学園にいる間に番を得るからだ。 そう、番探しにやってくるのがアルファの新入生だ。 その新入生のアルファの中の一人にミサキは驚かされた。 そのアルファはミサキの知ってるどんなアルファとも違った。 有り得なかった。 だってそのアルファはオメガを番にしたがらなかったのだ。 「オレは好きな子がいるの。ベータでね。その子以外はいらないの」 そう公言していた。 学園中のオメガもアルファも驚いた。 休みに期間に実家に帰ればベータ相手に遊ぶアルファは(番がいようといまいとそれは関係ない、何しろアルファはオメガに夢中ではあっても、オメガにどれだけ執着していてもそういうところがある)沢山いるし、オメガでも、番がいない者の中には、アルファみたいに恐ろしい執着は無いだろうと、ディルド代わりにベータで遊ぶ者もいる。 ベータはアルファオメガにはおもちゃくらいの感覚なのだ。 そのベータを恋人だと? 何の冗談だ。 学園中がザワついた アルファにはベータをぐちゃぐちゃに泣かせて、沢山イかせて楽しむ連中が居る。 それは、性欲と同じくらい強い支配欲を満足させるための遊び道具にベータをすることだ。 そして同じく、ベータで遊ぶオメガには、ベータは生きたディルドくらいの価値しかないのに。 アルファの遊びに、見つけたベータ(男の方が支配欲を満足させやすい)にセックスを教えこんで、支配を楽しむというのはあって、それで人生を狂わさせられたベータは何人もいるのだ。 町で見かけたベータに声をかけて、ホテルに連れ込むなんてアルファ達には簡単すぎるほど簡単だし、抱かれる気がない男なら、それはそれで征服欲がわく。 色んな手を使ってモノにする。 オメガ相手の時とは違って、そこには誠実さはないからこそ、狡猾だ。 もちろん、無理やりなんて、アルファの誇りが許さない。 どうやって落とすかがアルファのゲームで、自分とのセックスにどれだけ溺れせるのかもゲームなのだ。 もちろん、ベータ相手には本気のセックスなんて無理だから、ベータが自分にのめり込むのを楽しむ、趣味の悪い遊びだ。 もう、女の子と恋愛なんか出来なくなったら捨てる。 そしてもちろん、上手に別れることもゲームだ。 そして気が向けば、また遊びに使うのもいい。 遊ばれていても、ベータは何度でもアルファの言うなりになるようになる。 ミサキの大嫌いなアルファの傲慢さそのままの遊びななのだ。 そして、オメガを抱いておかしくなって、人生を狂わさせられた男達もいるわけで。 オメガは貪欲にディルドとしてベータを使う。 アルファとのセックスは、番になるならないの問題や、執着等の危険がある。 これ以上無いほどの快楽があっても、アルファとは良く考えて付き合うしかない。 オメガ同士でするオナニーよりは劣ってはいても、ディルドとしてならまだ良いか、とオメガもまたベータを遊びに使うのだ。 美しいオメガに誘われたなら断れる男はそういない。 でも、オメガに使われたなら、オメガが止めるというまで、ベータは腰を振り続け、泣きながら許して欲しいと泣き叫ぶことになる。 そして、その快楽を忘れることも出来なくなる。 オメガに焦がれて狂ってストーカー化することもある。 だがある程度年齢を重ねたオメガはアルファ程ではなくてもベータ等はねのけられる力を持つし、アルファ達がオメガの保護のためならなんでもする。 オメガをベータが支配等できないのは誰もが知っている。 ベータにはオメガの身体に焦がれて自殺する者すらいる。 アルファにしろ、オメガにしろ。 ベータは関わらない方が良い事のは、常識なのだ。 アルファはオメガ。 オメガはアルファ。 ベータはベータと決まっていて、それが一番平和なのだ。 だが、そのアルファが信じられないことにベータに恋していた。 「まだ恋人じゃないけどね。ゆっくりゆっくり、色々教えていかないと。で、その子が成人したら結婚するんだ」 アルファらしく宣言する。 アルファは言ったことはそうする。 ベータをパートナーにするつもりだ。 確かに本当に数は少ないが、いないわけではない。 全てのアルファ、オメガが学園に来るわけでもないからだ。 例外はどんなものにもある。 だが。 そんなアルファを見るたことがある者でさえ、アルファである者達でもオメガである者達でも少数だろうに、この学園にその当事者がいるのだ。 さすがに他人のことに、闘争のため以外ではあまり興味をもたないアルファでさえも、ザワついた。 「可愛い可愛いオレのキョウちゃん」 アルファはそのベータの名前を嬉しそうに何度も言っていた。 それは。 アルファがオメガに執着するのとはどこか違っていて、ミサキはそのアルファに興味が湧いた。 その頃には、アキラと一緒に寮から学校の行き帰りを一緒にし、本の話等をするようにはなっていた。 だけどやはり今も、ミサキはアキラを怖がってもいた。 でも。 こんなにもオメガに興味がないアルファは初めてで。 絶対にオメガを番にしないアルファと思えるアルファは初めてで。 だから。 初めて怖くないアルファをミサキは見つけたのだ。 どのアルファにも感じたことのない興味が、オメガになってから、長く誰にも感じたことのなった「好奇心」が、ミサキの心を動かしていた。 このアルファは。 どういうアルファなの? それが全ての始まりだった。

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