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第24話

ユキ先生と楽しく話してカウセリングは終わった。 ミサキはカウセリングルームを出た時に、教室に忘れ物をしたのを思い出した。 読みかけの本を机に入れたままだった。 続きが気になるので取りに戻ることにした。 アキラが校舎外でずっと待っているだろうが、もちろん約束したわけではないから気にしないことにした。 そう。 そうか。 アキラはユキ先生を抱いてない。 そこに何か嬉しくなるものがあって、ミサキは不思議に思ったが、ユキ先生を誰に抱かれても嫌だから、と思い直した。 でも。 なんだか機嫌は良くて 頭の中で歌なんかを歌って、教室に向かっていたのでそれに気づかなかった。 やっと気付いたのはドアを開ける前で。 教室には人がいたのだった。 「抱かせてよ。1度でいいからさ」 明るい声がそう言っていた。 「ええ?!」 驚くオメガの声。 同級生の声だ。 番がまだいない同級生のオメガは少ない。その1人だった。 15にもなって番のいないオメガは珍しい。 とくにこの学園にいるオメガなら。 そのための学園だからだ。 散々色んなアルファから「番」になることを口説かれてきたオメガだからこそ、「一度だけでいいから抱かせて」などという軽い遊びの誘いに縁はなかった。 「アルファとしたいでしょ?番になんかならなくてもいいからさ」 ケロリとアルファが言う。 その言葉に反応したのはミサキだった。 「番」にならなくてもいい。 そしてアルファとしたくないか?その問いはいつもあった したい、身体はそう言っていた。 でも、心は番になって縛られたくない、と叫んでいた。 それを同時に満たしてくれる? ミサキは耳を疑った。 「アルファとしたことないの?すごい気持ちいいよ」 甘く教室の中でオメガが囁かれていた。 そのオメガは何人かのアルファとセックスはしていた。 でも、番になるのは踏みとどまっていたのだ。 何度もアルファ達にイカされながら、結局承諾しなかったのだ。 中々出来ることじゃない、とミサキは思ってる。 ミサキは自分でする自慰でもおかしくなるのに、もっとすごいことされてしまったなら、と怖くなる。 番になることを承諾してしまう可能性は高い。 「番にならなくても・・・いいの?」 震える声でオメガが言う。 「いいよ。あんたはただ気持ち良くなってればいい。オレ、好きな子いるし、番はいらないんだよね。でもオメガとはしたいんだよね」 そのとんでもない言葉にミサキは中にいるのが誰なのかわかった。 あの、アルファだ。 ベータが好きだと公言してる、あの変わったアルファ。 好きな子がいるのにオメガとするの? いや、それは番がいてもこっそりベータと遊ぶのがアルファだからそういうものか。 でも、ベータが本気で、オメガが遊び? ミサキは混乱する。 こんなの聞いたことがない。 立ち去るべきだと思ってるのに身体が、動かなかった。 番にならなくてもいい。 ベータを愛してる。 そんなアルファ。 信じられない存在だった。 「ああ、アルファとしたことはあるんだね、めちゃくちゃ腰揺れてるもん。指だけじゃ足りないみたいに」 笑う声がした。 ああっ あっ オメガが喘ぐ声も。 もう始まっているのだと顔が赤くなる。 でも。 どうしても動けない。 このアルファのことが知りたい。 オメガを番にしようとしないアルファのことが。 ミサキはだめだと分かってるのに、ドアを薄く開けてしまった。 そして。 ドアの隙間から。 それを見てしまった。

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