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第26話

ミサキが校舎の外に出た時にはすっかり暗くなっていた。 学校で自慰なんか。 ミサキは自分が嫌になる。 でも。 まだ身体は熱い。 あのアルファ。 確か。 シンと言ったっけ。 あんなアルファ。 初めてだった。 他のオメガを抱いてるアルファが気になるなんて。 しかも、あのアルファはベータを愛しているのだ。 でも。 「キョウちゃん愛してる」という切ない声を思い出すて、なんだかまた身体の奥が疼いた。 どう考えても、酷いヤツなのは間違いないのに。 外へ出ると、アキラが立っていた。 ずっと待っていたのだ。 それは分かってはいたが、今は。 アキラと会いたくなかった。 一緒になど帰れるわけがない。 嫌だ。 まだ身体が火照ってる。 近寄ろうとするアキラに言う。 「ごめん、今日は一緒に帰りたくない」 そう言うしかなかった。 アルファによって熱くなった身体を、アルファの近くに置きたくない。 いや、でも、あのアルファがここにいたらそう思うの?一瞬思ったけれど、それは考えないことにした。 アキラは戸惑ったような顔をした ミサキは一緒に帰るようになってから一度もそんなことを言わなかったからだ。 でも、言う通り、黙って背をむけて離れようとアキラはした。 遠く離れて、ミサキを見届ける気だろう。 絶対についてくるのは間違いない。 だが、ミサキと一緒に帰ることは諦める。 アキラらしい選択だった。 ミサキはわるいな、とは思った。 でも。 ダメ。 身体の奥が疼く。 笑いながらオメガの乳首を指先で捏ねながら、背後から自分よりはるかに小さなオメガを犯していたあのアルファを思い出してしまう。 深く抉るような動きを思いだすと、まるで自分の中にそれがあるかのように思えて、ビクッとミサキは震えてしまった。 ダメだ。 こんなこと。 アキラの前で何を考えて。 震えた身体を、背を向けようとしながらも、ギリギリまでミサキの姿を見つめていたアキラに見つかった。 アキラは。 立ち去るのを止めた。 アキラが近付いてくる。 いつもなら、慎重に距離をつめてくるのに。 ゆっくり、でも、その1歩1歩が恐ろしく重い。 「止まって!!」 怖くなってミサキは叫んだ。 アキラは止まった。 でも。 その目は食い入るようにミサキを見ている。 獣の。 獣の目。 金色の。 ミサキはガタガタ震えた。 でも。 孔が疼いて、濡れて溢れるのがわかる。 怖いのに欲情してる。 嫌だ怖い。 怖い。 「どうして・・・そんな顔をしてる」 低い低い声がした。 ミサキの知る人間の中で最も深く低い声。 「そんな、顔って?」 ミサキは震える声で言う。 あの匂いがした。 風が運んでくる。 甘い。 安心と不安を呼び起こす匂い。 ミサキは自分がどんな顔をしているかわからない。 自慰をしてもおさまらない欲望が、その目に肌に残っているとは思わない。 でもアキラはそれを見る。 「・・・誰だ。誰に何をされた」 アキラは唸った。 ミサキは戸惑い怯えるばかりだった。

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