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第28話

シンは相変わらず目立っていた。 そして、当然、アルファ達から憎まれていた。 何故なら番のいないオメガと次々にセックスしていたからだ。 番のいないオメガ達はシンとセックスしたがった。 「安心」してセックスできるからだ。 アルファ達の支配欲とは別な、ただ快楽なだけのセックス。 オメガたちにはそれが嬉しかったのだ。 いつかは。 アルファを選ばないと。 生きていくために必要だから。 でも、本能としてオメガを求めるアルファと、オメガの「必要」の間には差がありすぎた。 オメガは猛獣使いのように、アルファと向き合わなければならない。 求められ、どんなに言うことを聞いてくれても、そこにいるのは、人間ではない。 だが、自分を求めることのないアルファ、シンとの関係は気楽だったのだ。 そして、シンがオメガを抱くのは快楽と、愛する「ベータ」を傷つけないため、だというのは。 オメガ達を違う意味で救った。 アルファにも 「愛」がある。 本能だけではなく、本当に誰かを求めることができる。 それはオメガ達には衝撃だった。 特にミサキには。 ミサキはシンを目で追うようになった。 アルファ達の怒りの視線を気にすることなく、今日もシンはカフェテリアでオメガを口説いでいる。 「しようよ。気持ち良いだけだよ」 シンはニコニコ小さなオメガに話しかけている。 シンと同年齢だろう、まだ11になったくらいにしか見えないオメガが、もう大人にしか見えないアルファに口説かれて居る姿は異様だが、ここではまあ、当たり前なのだ。 それでもまだシンは175センチ程度であり、ここからさらに大きくなるのは分かっていた。 アルファは大きく、美しい。 その中でもさらに大きいアキラのことを考えてしまって、ミサキはため息をついた。 今も視界の中には入らないが、アキラはどこかで自分を見ているのだろう。 あれからアキラはミサキに近寄らない。 視界にはいらないように気をつけているのがわかる。 怖がらせてしまった、と反省しているのだろう。 代わりにいつもの折り紙や花と一緒に、ちいさな手紙が靴箱に入っている。 綺麗というより丁寧な字がアキラらしいと思った。 読んだ本の感想がメモみたいに書いてある。 それは、ミサキにはとても面白いものだった。 アキラが通学や帰宅の時、となりにいないのを寂しくも思っていた。 アキラは。 ミサキを知ろうとしてくれて、ミサキを怯えさせないようにしてくれてる。 ちいさな折り紙。 丁寧な字。 アルファなだけではないアキラも見える。 だけど。 怖い。 怖いのだ。 アキラが押し殺そうとしている「執着」がのたうち回っているのもみえて。 その点。 シンの気軽さは、ミサキにとっても。 魅力的に見えた。 「1回だけ、ね?」 シンは魅力的に笑って、そっとオメガの手を取った。 オメガは真っ赤になっていたが、その手を振り払わなかった。 オメガはシンに促されるように立ち上がり、震える足でシンに手を引かれてどこかへ向かう。 カフェテリアの皆が「ああ、シンに今から喰われる」と分かってた。 シンは思うがまま、あのオメガを喰らい、オメガはそれに悦ぶだろう。 シンに後ころ突き上げられ叫んでいた同級生のオメガのことを思った。 その子は今では番がいるけれど。 シンに 激しく突かれ、喉を逸らして叫んでいた姿を思い出したなら、また中が疼く。 そこに自分を重ねてしまうなんて。 ミサキは頭を振った。 でも、オメガとシンがカフェテリアからでていくのをじっとみつめてしまっていた。 シンは番のいないオメガに片っ端から声をかけている。 もし。 シンに声をかけられたなら。 自分はどうするだろう。 ミサキは分からなくなった。

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