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第29話
昼食を食べ終えて、気がつけばフラフラとミサキはあの場所にいた。
そう、カウンセリングルームの近くの空き教室。
シンがオメガを抱くのに使っている場所だ。
それに気付いて真っ赤になった。
覗きみたいな真似を。
どんなにいろんなアルファが見せつけるように性行為をしていても、不快にしか思わなかったのに。
でも。
あのアルファはどんな風に、あのオメガを抱くの?
どんな風にオメガの中を犯して、どんな風に突き上げるの?
初めてシンとオメガを見た時の、まるで自分にされているような感覚が忘れられなかった。
もう一度だけ。
もう一度だけ。
自分の奥に嵌めて欲しかった。
見てるだけで、そんな感じになるあの感覚。
それは、アルファに身体を渡さなくても得られる快感で。
欲しかった。
やはり。
声がした。
アルファもオメガも。
始めてしまえば夢中になって、獣になるだけだから。
そして、今のミサキも。
それを欲しがる獣だった。
喉が鳴る。
ミサキはうすく扉を開けて。
その中を視た。
まだ幼いオメガは、信じられないくらい大きなシンのぺニスをそこに受け入れていた。
机の上に横たえられて。
オメガの孔で無ければ引き裂かれているソレを、そこで小さな孔をギチギチに広げて咥えこんでいた。
細い脚を広げて、薄い腹の皮膚にぺニスの形を浮かび上がらせ、ベータの子供なら死ぬその行為を、そのオメガは悦んで受け入れ、それに狂っていた。
オメガは全裸に剥かれ、全身の味を試されたのだとわかる。
項以外の全身に噛み跡と、吸い跡がつけられていた。
小さな乳首は充血し、ぶっくり膨れ上がり、乳首の周りには鋭い歯を立てられた血の跡が残っていた。
オメガの柔らかく、そして柔軟で強い皮膚で無ければ、ズタズタに切り裂かれるあの歯が、オメガの噛み心地を楽しんだのだ。
一番噛みたいだろう、項以外を。
項だけが無傷であることに、ミサキの中が疼く。
支配されない、一生を縛られることのない、この一時の快楽の証拠だったから。
それはなんて甘いのか。
シンは容赦なくオメガを突き上げていた。
ひぎぃいいい
うがぁぁぁああ
オメガの声は絶叫だ。
アルファとオメガのことを知らないベータが見たなら、子供をアルファが虐殺していると思うだろう。
でも。
ミサキはオメガが我を忘れて感じているのがわかる。
オメガはそして狂いながらも安心している。
信頼している。
番にされないということに。
「初めてなのに感度良いね。それに、誰も知らないってのは、興奮するね」
ひくい声でシンが笑っていた。
「キョウちゃんのハジメテはどうやって愛してあげよう。君たちみたいに【使う】わけにはいかないしね」
愛してるというベータのことを考え、そのベータのことを話しながらオメガを抱くのは本来なら最低の行為なのに、そこに安心する。
だって、オメガを得ようとしていないからだ。
週末かえる【家】にいるベータを襲ってしまわないように、いや、もし抱いてもオメガを抱くように抱いて殺してしまわないように、オメガで欲望を処理しているだけなのだ。
このアルファは。
鋭い歯をむき出し笑う姿は獣、そうアルファでしかない。
だけど、その姿に恐怖を感じないのは何故だろう。
アキラの中の獣は怖くてたまらないのに。
「ああ、初めてのオメガって良いね。こっちが食い尽くされる心配がない。これからはハジメテの子だけ狙おうかな」
シンはオメガの経験の無さをたのしんでいる。
そう、確かに。
アルファとオメガの快楽は一方的ではない。
オメガはアルファを喰らいつくすことも出来るのだ
アルファとオメガは性的な関係では本当に対等でもある。
シンもオメガ相手に余裕無しではいられないのだ。
だが相手が初めてなら。
まだシンが快楽をコントロールできる。
「ああ、キョウちゃんには出来ない、こんなこと・・・」
シンは執拗に一点を狙い抉り続ける。
そこを使うのが気にいったのだ。
アルファの力でベータにそんなことをしたなら、ベータは腹を割かれて簡単に死んでしまう。
だが、オメガならイキ狂うだけなのだ。
「キョウちゃん、キョウちゃん、好き!!」
好きなベータの名前を叫びながら、そのベータには絶対に出来ないことをシンはオメガにしていた。
そのためにオメガを犯していた。
道具のように使ってた。
でも。
熱がある。
愛する誰かへの、決して支配しない、アルファのオメガへの執着とは違う熱が。
それが自分に向けられたものではなくても、オメガはそれに狂う。
「いいねぇ・・・ハジメテでこんなになるの?オメガには何の遠慮もいらないね」
そう言われて、さらにえげつなく責められているのに、でも吐息のようにささやかれる自分ではない名前に、甘く溶けてしまう。
「沢山出してあげる」
カプセルが入っているから、妊娠しないからこそ、便利に使われているのがわかっているのに。
奥に出されて喜んでしまう。
アルファのだから身体は喜ぶ。
でも、それだけじゃない。
シンがオメガを抱きながら見せる、ベータへの恋心にオメガも酔うのだ。
そんな風には。
どんなに執着されても。
愛してもらえないから。
快楽とセックスと執着のないアルファとオメガなど。
ありえないから。
何度も自分の名前とは違う名前を呼ばれながら抱かれて、だからこそ狂う。
ミサキもそれを見て、酔う。
欲しいのはコレなのか?
そう思う。
「キョウちゃん」そう繰り返すシンから目がはなせい。
熱い身体が。
熱い。
薄く開けた扉の前から動けないミサキは身体が熱くてたまらなかった。
身体の熱が。
苦しい。
欲しい。
何を。
ミサキはどうすれば良いか分からなかった。
視るのもやめられない。
熱が。
熱が苦しい。
中から濡れてしただってる。
ぺニスもガチガチだ。
だめ。
だめ。
おかしい。
「ダメだ。アイツはダメだ」
低い声がした。
気がつくと熱い身体を、さらに熱い身体に包まれていた。
アキラがいつの間にか背後からミサキを抱き締めていた。
ミサキは悲鳴を上げるヒマもなく、それ以上に背中から包まれる熱に身体が反応してしまっていた。
「ダメだ。ダメだ。ダメだ」
低い深い声が繰り返す。
ミサキの頭の中が痺れる。
「ダメだダメだダメだ」
繰り返す声に脳が焼かれる。
薄く開けた扉の向こうで、オメガを存分に犯していたシンがこちらを振り返る。
シンは扉の隙間からミサキとアキラを見て確かに笑った。
だけど。
その笑顔がミサキの脳に焼け付くより先にミサキは抱き抱えられ、アキラに連れ去られていく。
ミサキは激しい混乱の中で、何が起こっているのか分からなかった。
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