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第44話
それは。
今まで快楽だと思っていたものとは全く違った。
底なしの。
そして、それが必要だったのだとわかる、
快楽だった。
貫かれる抉られる。
その残酷さに耽溺した。
大きな重い熱い身体にのしかかられ、身体を割開かれ、重く強く突き上げられる度にミサキは頭を掻きむしりながら絶叫した。
いいっ
いいつ
ひいいいっ
やだ
いいっ
叫ぶ声はもう。
悲鳴ではなかった。
快楽は。
火傷のように確かだった。
泥の中に沈み込み、抜け出せなくなるように深く深くはまりこみ沈み続けて、身体の全てを奪った。
それは内側からやって来て、体内から爆発し、身体を粉々にする爆弾だった。
オメガの身体が喜ぶ。
アルファが体内をめちゃくちゃにすることを。
アルファが体内にいることを喜ぶ。
ここで、ソレを育てて、種を撒いて欲しいと。
アキラが激しく腰をぶつけてくる。
引き裂くようなそれが、ミサキの脳の芯にまで届く快楽をくれる。
アキラの匂いがする。
それは自分身体の中に染み込む匂いだった。
匂いが犯す。
鼻腔から、毛穴から染み込んでくる。
ミサキの深いところまでやってくる。
それがミサキを濡らす。
音がする。
それは耳から脳を刺す甘さ。
深く刺し殺される甘さ。
それがミサキを震わせた。
体内はゼリーのように解けて、指や舌より敏感に、アキラのソレを感じとり、それを欲しがった。
舐めるように、指で貪るように。
もっと
もっと
だして
中に欲しい
ぐちゃぐちゃに
ああ、
気持ちいい
気持ちいい
それは言葉になっていたのか。
ミサキはヨダレを垂れ流し、突き上げられる度に痙攣し、腰をゆらした。
「甘い 甘い・・・」
アキラが呻いた。
アキラも夢中になっているのがわかる。
糖蜜の中に溺れるように、もがくような快楽。
溺れて死ぬのを望むような。
ミサキは知らない。
自分がアキラをどれほど淫らに締め付け絞っているのか。
絡みつき搾り取るその孔がどれほど淫らで麻薬のようなのか。
そう。
飢えを満たされる。
長い間の。
それはどれくらい長い間?
アルファの身体が求める。
これだ、と。
これしかいらないと。
オメガの身体が求める。
これが欲しい。
欲しいと。
その快楽は。
失った身体を取り戻すような、幸福感にも似ていた。
「俺のがいい、だろ?」
アキラはそれでも苦痛のように叫んでいた。
「アイツのでもそんなになったのか?」
それは悲鳴のようだった。
「俺はずっとずっと好きだった!!!なんで!!!」
アキラのそんな言葉の意味など。
もうミサキには届かない。
ミサキは生まれて初めてのアルファに狂っていた。
それは。
もう一つ身体を得るような。
そんな快楽だった。
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