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第48話

ミサキの前にアキラは姿を現さなくなった。 もう、小さな折り紙や花も届けられることはない。 ミサキは貰った折り紙を全部捨てた。 アルファの能力とは関係ない技術である折り紙は、アルファではなかった少年アキラからのプレゼントだと思って微笑ましく思っていたけど、もうそんなのどうでも良かった。 承諾の言葉を与えてしまった以上、ミサキがアキラに対してできることはなかった。 アルファはオメガの承諾でしか、そう出来ない。 「承諾」を与えてしまったなら、もうそれはオメガの責任になる。 「番」にされる可能性があった、と言ったところで、アキラが壊れている証明など出来ないのだ。 所詮アルファ支配の世界は、オメガに不平等なのだ。 アルファ達はオメガに承諾を言わせるために何でもする。 アルファとは違い精神的にまだ未熟な和解オメガ達は、「言わされて」しまう。 結局、ミサキもそうだったということだ。 ミサキは悔し涙を流しながら諦めた。 これがオメガ、ということだ。 アキラは姿を見せない。 でもいることは分かっていた。 絶対にミサキから離れないのだ。 アキラはいる。 ミサキに見えるところにはいないだけで。 ミサキに決して他のアルファを近寄らせないために。 アキラには。 ミサキを誰かに渡すことの方が、ミサキよりも大切なのだから。 ミサキはそんなアキラを嫌悪した。 だけど、アキラの望みとは逆に、ミサキはシンと親しくなっていったのだった。 「・・・ミサキちゃん、大丈夫?」 数日部屋に引きこもっていたミサキが学校へ向かった時、声をかけてきたのはシンだけだった。 オメガ達は不用意な言葉をかけられないと遠巻きにしていたし、アルファ達はアキラを恐れていた。 シンだけはアキラを恐れなかった。 シンが早くも力のあるアルファであることを見せつけていたのは確かだが、アキラの執着はアルファとしても異常で(まだ番になっていないオメガへの執着としては)、ミサキに関わることはアキラへの闘いへの宣告ともされる可能性があった。 なのに、シンはそれを気にしなかった。 「・・・オレと話したせいだろ」 シンはすまなそうに言った。 「悪い。流石にあの後体力無くなって、気絶するみたいに寝てて。誰かが知らせてくれたなら、絶対に止めに行ったのに」 シンはそう言ってくれた。 行為が始まってしまったなら、誰も止めない。 オメガもアルファも始まってしまったならそれを望むだけだから。 だけど、あの。 承諾する前のあの時に。 誰かが止めてくれたなら。 怒り狂ったアキラを止められる人がいるとしたなら、それはユキ先生だけかと思っていたけれど。 シンなら来てくれたのか。 単に責任を感じてるだけだとしても。 上位のアルファと何の準備もなくやり合う程、アルファは甘くない。 だけど、シンはそれをしようとしてくれるのか。 アルファはこういうウソはつかない。 シンは自分の恋人にだけは嘘つきだか、それ以外には嘘などつかない。 「お前が謝る必要はない。話をしただけで、勝手に疑ってレイプする奴がおかしい」 ミサキはそう言い切って、ああ、自分でもその通りだなと思った。 「そうだね」 シンもそう言った。 「例え、お前とオレがセックスしていたとしても、そんなのアキラには関係ないんだ」 ミサキは断言した。 「そうだな。今からする?」 軽い調子で言われて、ミサキは笑ってしまった。 本気じゃないのは分かったからだ。 シンは。 ちゃんと口説いて同意をとっている。 恋人がいるけど、オメガのようには抱けないから、代わりに使わせてもらう、とその酷い理由も述べている。 その上で口説いて。 ミサキに同意がなけれは。 本当に同意がなければ。 しないだろう。 ある意味。 シンは誰よりも安全なアルファだった。 決してミサキを番にしない。 「アキラ!!シンに手を出したらお前を殺すからな」 ミサキは言った。 「え?なんで突然アキラ・・・」 突然のミサキの言葉にシンは戸惑ったがすぐに理解した。 アキラはここにいなくても。 ミサキを見てるしミサキの言葉を聞いている。 ミサキは確信してたし、シンもそれが分かった。 「わぁ・・・だからアルファってキモイ」 シンはブツブツ言っていた。 そのアルファらしく無さにミサキは笑った。 また笑えるのだとわかった。 そして少し泣いた。 「泣かないでよ、ミサキちゃん」 シンの言葉は軽かったが、思いやりはあった。 「泣いてない」 ミサキは涙を拭うと強がった。 「・・・そだね」 シンは笑った。 そんな会話から。 ミサキとシンは。 親しくなっていったのだった。

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