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第49話

ミサキとシンは親しくなっていった。 アルファはオメガ以外は基本必要としないが、シンの恋人はオメガではなかったし、オメガではなかったからこその苦労を抱えていた。 「カウンセリング」をユキ先生とはしていても、愚痴ではなく、何より恋人について惚気けたかった、のがシンがミサキと話をするのを好んだ理由だろう、とミサキは思った。 学園のオメガ達相手ならどこででもセックスするようなシンが、実は恋人相手には慎重で、色々してはいても、最後まで手を出してはいないことには驚いた。 ベータ相手に本気で抱くことなど、アルファには出来ない。 身体の強さが違いすぎるからだ。 あくまでもベータとセックスするのはアルファにとって性欲と同じくらい強い支配欲を満足させる行為でしかないのだが、シンはその行為をとても望んでいて、でも、恋人のためにそれを我慢してもいた。 アルファ達はベータが自分達アルファにのぼせ上がるの楽しむためだけに、ベータで遊ぶことはよくある。 アルファに狂うベータで楽しむのは支配欲だ。 オメガ相手だと1ミリの余裕もないアルファは、ベータ相手だと、ベータが狂うことを見て楽しむ。 そして捨てる。 泣いて苦しみ、縋り付くことさえ楽しみなのだ。 悪趣味極まりない、最悪な、 遊び。 アルファはオメガしか本当には求めない。 なのに。 そのはずなのに。 シンはベータに恋していた。 本気で愛していた。 ベータの身体にさえ、夢中になっていて、夢中になりすぎて抱いて殺してしまわないように、オメガを代わりに使うほど。 そんなの。 有り得るんだ、とミサキは驚いたのだった。 シンが語る幼い頃からへの恋人への想いはミサキには眩しいものだった。 「キョウちゃんが、キョウちゃんがね・・・」 シンは恋人の話をする時だけは、「悪い男」ではなかった。 シンにはベータの恋人こそが全世界なのだと分かってしまった。 恋人に会う夜のために、オメガを抱いているのだ。 恋人を殺してしまわないために、飢えたままで恋人の前にいないように。 それだけではなく、楽しんでいるのも確かな最低な男でもあったけれど。 「アルファを知ったらつらいんじゃない?オレが慰めてあげよっか?」 本気混じりで口説かれもしたけれど、ミサキはもちろん断った。 シンと合意で楽しむオメガの一人にもなれなかった。 だってシンに恋をしていたから。 シンは新入生の警戒が緩いオメガ達を好んだ。 まだ未熟で幼いオメガなら、自分が飲み込まれる心配がないという卑劣な考えと、まだ何も知らないということにアルファのどうしようもない支配欲があったのだろう。 もちろん、番になってはいないがアルファと関係はあるオメガもそれはれで好んだ。 それも支配欲、からだろう。 「他のアルファにどうされたの、って聞きながらするの楽しい」 ゲスなシンはしれっとそんなことまでミサキに言っていた。 ミサキは呆れたが、それでもシンはオメガ達に人気があった。 オメガ達はシンには安心したのだ。 性欲だけを満たせて。 番という鎖に繋がれずにすむから。 シンはアルファ達に憎まれ、時に攻撃されたが、やり過ごし、時にやり返し、着々とアルファの順位を駆け上がっていっていた。 裏庭のベンチで、子供のようなまだ幼いオメガを、シンが膝にのせて、笑いながらその身体を弄っているのを見てしまうことはあった。 オメガのズボンは脱がされ、小さな尻を揺らし、幼いオメガは太いシンの腕に捕まり喘いでいた。 シンは悪い笑いを浮かべたままで、そこに思いやりはなかった。 上級生のオメガを屋上で後ろから貫いているのを見たこともあった。 この時ばかりはシンも余裕なく、二人はアルファとオメガでしかありえないセックスに狂っていた。 コンクリートの上で白い身体を波打たせるオメガは全裸で、シンはズボンをくつろがせているだけなのが、シンがどういうスタンスなのかが分かってしまう。 シンは酷くて自分勝手で。 でも。 オメガを支配はしないから。 それでもオメガ達はシンを求めて。 でもミサキはそうなれなかった。 だって本気で恋をしていたから。 こんな酷い男に。

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