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第55話

色んなものが張り詰めていて。 壊れるのは分かっていた。 シンの名前を呼びながら、アキラに抱かれ貫かれた感覚を忘れられずに自慰に狂うミサキ。 オメガを誰かれ問わずにだきながら、それが執着になっていると気付きはじめたシン。 ミサキを諦めてやりたくても、あきらめられないアキラ。 もう。 それはすぐそこだった。 その日が訪れた。 シンが恋人を学園に連れてきたのだ。 そして恋人はシンを怒らせたのだった。 自分ではなく、オメガを番にするように、と。 それはシンに絶対に言ってはいけない言葉だった。 シンは自分と恋人を引き離す者をゆるさない。 それが愛する恋人自身だったとしても。 そして。 恋人がたまたまシンのオメガの候補に良いと思ったのが、カフェテリアにいたミサキだった。 いや、ベータの男でもあるその恋人が、「いいな」と思ってしまったのがミサキだった。 美しい、ベータなら虜にしてしまうオメガだったから。 憧れるようにミサキをその恋人は見つめさえしたのだ。 恋人は。 実際のところ。 まだ恋人と言えるものではなく、シンがそう決めているだけだと言うことだったのだし。 弟のようなシンに良いオメガの番を。 恋人、いや、そのシンの幼なじみの少年は願っていたからこそ、ミサキのようなオメガがいいのでは、とシンに勧めたのた。 シンはその言葉が許せなかった。 シンの怒りは尋常ではなく。 そうは見えなかったからこそ、危険な程だった。 そのカフェテリアでシンが我を失うほどに怒っていることに気付いたものはいなかったのだが。 シンは少年を連れてミサキの前にやってきた。 「番になりたい?」 突然シンに言われてミサキは戸惑った。 シンは遊ぶためのおめかではなく、いかにもベータという少年と一緒だったからだ。 ベータの優しげだが平凡な少年、シンよりは年上と言っても、ベータなのて年相応の、本当に普通の少年が、あのシンの「可愛い可愛いキョウちゃん」だとは思わなかった。 だって、美しいオメガを散々食い散らかしながら、キョウちゃんの可愛さを説いてまわっている、あの、「シンの」「キョウちゃん」がこんな平凡な少年とは思えない。 番になりたいかと言われて、ミサキはそれを否定できない。 ミサキはシンの番になりたかった。 愛され求められたかった。 シンがもし、誰かを番にするならそういうことだ。 だってシンが欲しいのは愛する人だ。 番はつくらないと言ってきたからこそ。 そして。 シンに抱かれたかった。 処理のためのオメガの一人としてではなく。 だから。 シンにそう言われたなら。 拒否ができない。 なりたかったのだから。 そこから起こったことは。 とても酷いことだった。 アキラがミサキにしたことよりも。 酷いことだった。 シンに手を掴んでシンの部屋に連れ込まれた。 ベッドの上に押し倒された。 慌てて止めるようにやってくる少年の前で、あっという間に裸に剥かれた。 突然過ぎてされているのことの意味が分からないのに、分からないからこそ、まだ恋心と、シンへの信頼がそこにあったのだ。 身体を撫で回された。 シンの手は大きくて。 オメガの身体にどうしようもなくフィットした。 撫でられるだけで、ミサキの真っ白な身体は波打った。 アキラにあの日、犯されその孔をなぶりつくされたけれど、ミサキはアルファに身体をそんな風には触れられたことなどまだなかったのだ。 皮膚の下にあるのは快楽だった。 アルファの手はそれをミサキに教えだす。 ああっ ミサキは少年の前で感じて声を上げてしまう。 同意の言葉は与えてない。 でも。 拒否できないのは、ミサキの心がバクを起こしているからだ。 だって。 シンはこんなことしない、そう信じてきたからだ。 「シン、何を!!」 ミサキではなく、少年が狼狽えた。 彼はミサキ以上に動揺していて、ミサキ以上に混乱していて。 シンは怒りにもえていた。 その怒りは。 少年とミサキに向けられていた。 そう。 少年がミサキに欲情している。 だからこそ。

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