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第59話

「キョウちゃんいいの?オレがこのオメガと番になっても」 シンが今まで1度もこの少年には聞かせたことがないだろう意地悪な声で言う。 シンは傷ついた目の少年が「嫌だ」というのを待っていた。 ミサキにはそれが分かってしまう。 ヒクヒクと震えながら、射精した余韻に脳を焼かれながら。 少年はとても傷ついていて。 シンを愛しているのがわかった。 でも。 少年はシンが思っているよりも、シンを愛していた。 「いいよ。シンはオメガと番になるべきだ」 少年は真っ青な顔で言った。 少年もまた。 ミサキがシンを好きなことが分かっているのだ。 拒否権は常にオメガにある、でもここに連れ込まれる時にミサキは断らなかった。 「番になりたいか?」とシンに聞かれて、ミサキは喜んでしまった。 今もシンを拒否できないのは無惨な恋心のせいだ。 だから。 少年はミサキがシンを好きでシンがそうしたいなら、シンを番にするべきだと思っている。 その理由は。 自分がベータだからだ。 誰もが知ってる。 アルファが求めるのはオメガなのだ。 だから少年はそんなにも悲しい顔をして。 そんなにも青ざめて。 白くなるまで指を握りしめながら。 シンにミサキを番にするように言う。 少年が一番分かっているのだ。 オメガを求める本能に引き裂かれるのはアルファだと。 だから。 だから。 そんなにも辛いくせに。 ミサキは悔しかった。 悔しすぎた。 ミサキにはこんな酷い男をそこまで愛せないし。 番にすると言われて喜んでしまったからこそ憎い。 でもまだ心は割り切れない。 好きだった気持ちが記憶が、心をぐちゃぐちゃにする。 「そう」 奇妙な乾いた調子でシンは言う。 その表情をミサキが見ることはなかった。 ミサキもシンも少年を見ていたから。 シンは優しくミサキを横たえた。 シンの指は熱を取り戻していた。 やっとシンの顔が見えた。 シンは笑っていた。 少年には見えないよう顔を隠して。 シンは幸せそうに笑っていた。 少年の愛に酔っていた。 満たされていた。 なのにミサキの胸にキスをした。 それは優しいキスで。 ミサキに向けられたものではなく、ミサキの身体を通して少年に向けられたものだった。 その落とされただけの唇は。 甘くて。 熱くて。 ミサキのぐちゃぐちゃになった心が身体に勘違いさせる。 好きな男に、愛されているかのように。 心臓の上に、唇で愛が刻まれる。 その感覚にミサキは今まで一番深く、感じてしまった。 その愛が自分へのものではないと分かっているのに

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