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第60話
優しい唇の甘さはミサキを溶かした。
何も挿れていないはずの孔が収縮した。
アキラに犯され何度も欲しがった時より深くミサキは達した。
シンの優しい唇を心臓の上に落としただけのキスは、ミサキの心臓を締め付けながら、孔の奥まで感じさせた。
愛されていると、脳と身体が勘違いする。
シンが夢に見たように優しく笑って、キスした後自分を見下ろしてくるから。
そして、まるで愛しくてたまらないかのようにミサキの乳首を舐め始めるから。
行為よりその優しさにミサキは乱れた。
可愛がられた。
それは欲しがられる行為とは違った。
ただひたすら愛しくて愛するための行為だった。
シンはただ、そこを楽しむためでも喰らうためでもなく、感じさせ愛おしむためだけに、舌を使った。
ミサキにじゃない。
それを見ている少年に、ミサキを通してそうしてる。
それなのに、愛されている感覚に身体は喜んでしまう。
優しい優しい舌と、優しい目。
背中に回された手の平が、愛しくてたまらないと背中を撫でる。
自分にではない。
でも、溢れ出す愛しさは本物だから。
ゆっくり舐められ、また、愛しげにキスされる。
ミサキは泣いてた。
顔を歪めて、子供のように。
それでも優しいシンの簡単な行為に溶かされて、輪廓が無くなるほどに感じてた。
シンの唇と、優しい目だけがそこにあった。
勘違いした恋心が叫ぶ。
「好き・・・好きぃ」
それは言葉になる。
シンが低く笑って、その言葉に答えるようにまた胸を甘く吸った。
ミサキを優しく感じさせるためだけに。
「好きぃ!!!」
ミサキは惨めに叫んでしまう。
踏みつけられた恋心。
それはまだ殺せていないから。
シンは舌先で乳首を潰して、転がした。
シンの口の中で飴のように溶けていく。
その甘さは残酷な程だった。
「好きぃ!!!」
ミサキは叫びながら、泣きながら、また達した。
孔の中は挿れられていないとは思えないくらい、収縮を繰り返していた。
でも。突然終わった。
シンがミサキの身体から離れたのだ。
ひくつきながらミサキはシンを見上げる。
シンは怖いくらい無表情だった。
「なんで、そんな顔してるの?キョウちゃん」
シンの声は落ち着いていて、どんな感情も感じ取れなかった。
シンの視線の先で少年は。
生きながら焼かれているのに、それに黙って耐えているかのように歯をくいしばって震えていた。
そして。
泣いていた。
その涙をシンは食いいるように見ていた。
そして唇の端が僅かに上がった。
ミサキにしか見えない微笑み。
シンは。
少年を手に入れたのだ。
言葉をひきだせはしなかったけれど。
「本当にバカなキョウちゃん。オレの可愛いキョウちゃん」
シンの声は甘すぎた。
ミサキはそれでも立ち上がろうとするシンに手をのばす。
こんな身体を熱くして、こんな心を揺さぶって、なのにはなれていくのは狡い。
狡い。
狡いのに。
ミサキの中ではまだ恋心が殺せてない。
ミサキが掴んだ腕をシンは非情に振り払った。
「ごめんね。オレはこんなに酷い男なんだよ」
シンは言った。
気の毒そうに。
でも、それは少年へのポーズでしかない。
人間らしくみせるための。
ミサキには少年が手に入ったことを喜んで他のことはシンがどうでも良いのが見てとれた。
酷い。
酷いのに
まだミサキはこの男が欲しかった。
欲しかったのだ。
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