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第69話

その日、朝からだるかった。 前の晩、アキラがいつもよりしつこかったせいかと思った。 部屋に連れ込まれて、いつものように激しく抱かれたのだ。 今日明日とアキラは【仕事】で学園を留守にする。 ミサキと離れなければならないからか、中々終わろうとしなかった。 だが。 オメガの身体は強い。 こういうことは何度もあった。 だが、ミサキは平然と日常を送ってきた。 アルファ以上の耐久力を持つのはオメガなのだと実感させれてきたし、だからこそベータが本気のアルファとセックスしたら死ぬのも納得してる。 なので、だるい、しんどい、というのはミサキにしては珍しくて、奇妙だと思った。 ミサキはオメガになってから、心労以外で寝込んだことはない。 オメガはウイルス細菌等にも強く、そのことから未知のウイルスに出会うかもしれない惑星探索のメンバーはオメガでという主張もあったが、アルファがそれを認めなかった。 アルファにしてみれば、オメガの強さもアルファのためであるからだ。 オメガだけで、アルファのいない場所へ? アルファからしたら有り得ない。 アルファのためにオメガはいるのだから。 とにかく、心因以外の体調不良は初めてで、ミサキは戸惑った。 それでも、アキラがいないだけでもミサキの心は軽く、喜んで学校に向った。 何らかの形で監視はしているに決まっているが、存在がいないだけでも充分気持ちが楽になる。 抱かれた果てに、抱きしめられて寝たりはしているが、ミサキはアキラにずっと心を閉ざしている。 朝起きたら、アキラを部屋に残してさっさと自分の部屋に戻った。 アキラの顔を見ようともせずに。 アキラは目覚めて、こちらをみつめていたようだけど、とにかく無視をした。 セックスでおかしくなってる時以外は言葉も交わさないし、視線も合わせない。 部屋をでてアキラがいないことに喜んだ。 いない方が楽だった。 身体は確かに疼くだろうが、2、 3日ならそこまででもない。 どうせ。 ミサキ以上にアキラの方が耐えられないのだ。 オメガ無しで生きられないのはアルファなのだから。 ミサキは束の間の自由を謳歌するつもりだった。 ユキ先生の家へ行って、久しぶりに先生に構ってもらうつもりだった。 先生は今でも、ミサキを特別に可愛がってくれている。 二人で映画をみる約束をしたのだ。 友だちだったアキラもシンも、今では憎いアルファでしかない。 ミサキが心を許せるのはもうユキ先生だけだった。 シンは。 相変わずだった。 ただ、前程、あちこちのオメガに手を出していない。 恋人と上手く行ったのだとしても、不思議だった。 恋人がベータでは。 アルファの欲望を受け入れられないのに。 アルファ以上の耐久力をもつオメガだからこそ、アルファの欲望を受け入れられるのだ。 シンはその欲望をどうやって処理しているのか。 不思議だった。 ミサキはシンが「耐えている」ということだけは信じていない。 シンほど欲望に忠実なアルファはいないからだ。 それに。 欲望を耐えてそれをベータの恋人にぶつけることをシンが望むわけがなかった。 恋人が死ぬのだから。 シンのことをアキラの次にミサキは憎んでいたが、恋人への想いは本当なのだろうとは思っていた。 許すことなどなく、ミサキはシンに自分が感じた絶望を与えてやりたいとは思っていたけれど。 熱っぼくて、だるかったけれどオメガの自分が風邪等ひくことはないとミサキは知っている。 アキラとの生活のストレスだろうと思った。 授業が終わってから、学園内にあるユキ先生の家に行くつもりだったが、早退して、ユキ先生の家へ向った。 ユキ先生は今日はお休みで、家でのんびりしながら、ミサキが夕方に来るのを待ってるはずだ。 ユキ先生と過ごす時間が一番ストレス解消になる。 ユキ先生に会うのを教えてもいないのにアキラは予定を知っていた。 だから昨夜余計にアキラに責められたのもわかっていたけれど、アキラにユキ先生とのことを口出しさせるつもりはなかった。 ミサキはユキ先生に少しでも早く会いたくて、走って家に向った。 家に着く。 ミサキはドアからではなく、先生の家の小さな庭の側にある窓からユキ先生に呼びかけようと、そちらに回った。 大きな窓から庭を眺めて、ソファで寛ぐのがユキ先生が好きなのを知ってたからだ。 今日はそこで一緒に並んで座って話をしようと思っていた。 だけど。 ユキ先生はソファでゆったり寛いでいたりしなかった。 開け放たれた窓の向こうで、ユキ先生はソファの上でシンに犯されていた。 そうシンが。 ユキ先生を犯していた。 肩に脚を担ぎ上げ、思い切りユキ先生の孔を突き上げていた。 先生の焼けた爛れた顔に舌を這わせながら。 シンは笑っていた。 ユキ先生はシンの突き上げにもっと欲しいと叫んでいた。 シンが学園のオメガに最近手を出していない理由がわかった。 シンはユキ先生で【処理】していたのだ。 ミサキは凍りついたように立ち尽くしていた。

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