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第72話

ミサキは泣いていた。 こんなに辛いのははじめてだった。 アキラに責められ、泣いて欲しがるようにされるのとも根本的に違っていた。 飢え。 乾き。 それが無いと死ぬ、そんな感覚だった。 ああ、オメガは。 アルファがいないと生きられないようになっている。 そうミサキは実感した。 飢えと。 恐怖があった。 死んでしまうかのような。 土の上で転がりながら、自分の身体を必死で弄った。 欲しがる孔は、指を物足りないと不満げで、乳首も吸って噛んでくれる唇を求めていた。 「アキラ!!アキラ!!」 ミサキは泣いて叫ぶ。 嫌いな男だけが救ってくれることを、ミサキは知っていた。 どんなに指で擦って淫らに尻を振ろうと、胸を揉みながら乳首を指でこねようと、そんなものではダメなのだ。 アルファが必要だった。 どれくらいの時間? 数十分? ちゃんとアキラが現れた。 ヒートに入った番をアルファがそのままにするわけがない。 どうやってそれを把握したのかには口を割らないだろうけど。 「ミサキ!!」 駆けつけ、すぐさまミサキを抱き上げるアキラは汗だくだった。 必死で駆けつけたのはまちがいない。 ミサキはアキラにしがみつく。 「アキラ!!アキラ!!」 名前を呼んで嬉しさになく。 これで楽になれるから。 セックスの果てにしがみつかれることはあっても、最初からミサキに触れても抵抗されたことしかないアキラは、しがみつかれて硬直した。 ミサキから抱きつかれたことなど、なかったのだ。 嫌がるところを感じさせて、無理やり受け入れさせることしかして来なかったから。 「ミサキ・・・」 くぐもった声がした。 ミサキを抱きしめる腕が震えていた。 「早くぅ・・・早く・・・中で出してぇ・・・」 ミサキはアキラに叫ぶ。 アキラもフェロモンにやられているはずだ。 アキラもまた、ヒートに入った番のオメガと向かい合うのは初めてなのだ。 ミサキと同じくらいアキラも飢えてるはずだ。 ヒートに入ったオメガのフェロモンを前にすると、アルファは喰らわずにいられない。 公衆の面前でも構わずオメガを犯す。 それを避けるため、オメガは番を得るまでヒートが起こらないようにするカプセルを入れられているのだ。 番が成立すると、そのフェロモンは番にしか効かなくなるため、カプセルを外されるのだ。 だが、番にはフェロモンが効く。 番のアルファには。 だから、アキラがその場でミサキを犯しても何もおかしくはなかった。 だけどアキラは歯を食いしばりミサキを着ていた上着で包んだ。 「早く・・・中でゴリゴリして!!いっぱい出してぇ」 泣いてるミサキの口を大きな手で塞ぐ、 「してやる。いっぱいしてやる。だけど。こんなトコじゃしない。もうしない。あんなことは2度としない。でも黙っててくれ。煽るな・・・耐えられなくなる・・・」 アキラは呻いた。 怒りに任せて外のベンチでミサキをレイプしたこと。 それをアキラは忘れていなかった。 「あんなことは・・・絶対に・・・」 呻くアキラをミサキは叩く。 早くなんとかして欲しかったから。 言葉はアキラの手で塞がれて出てこなかった。 一言でも煽られる言葉が出たならアキラはたえれなかっただろう。 アキラはミサキを大切に抱きしめると、ミサキを抱えて走り出した。 自分の部屋へと。 一秒でも早く。 飢えていたのはアキラもおなじだったから。

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