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第78話

交渉は上手く行き、これでこちらのやりやすいように現場は動かせそうだ。 ミサキは満足していた。 美しいオメガに惑わされ、そして、そこから反転して脅されて、相手がオロオロしていたのか面白くて堪らなかった。 これであの現場ではオメガに舐めた態度をとるやつはいないだろう。 ミサキは上機嫌で街を歩いてた。 社長に電話も入れた。 褒められて、今日はそのまま早く帰って良い、と言われた。 まだ昼になったばかりだ。 降って沸いた時間。 久しぶりにユキ先生に会いに行こうと思った。 先生の新しい職場は知っている。 先生は新しく自分で事務所を開いた。 特定個人のためのカウンセリングを行っているらしい。 オメガ中心の。 考えたくはないけど、多分アルファで診てるのはシンだけだろう。 シンはとうとうユキ先生を囲いこんだのだ。 その身体を独占しているのだ、アルファらしく。 恋人を殺さないために、ユキ先生を犯してる。 ユキ先生は身代わりだ。 でも。 ミサキはユキ先生を責められない。 ヒートや身体の疼きのために、オメガにはアルファが必要なのだ。 でも。 シンの恋人はどうなんだろう。 ユキ先生のことをどう思ってるんだろう。 いかにもベータらしい、大人しそうな少年の姿を思い出す。 それはあの日の思い出に繋がる。 そして頭を振る。 思い出したくはない。 シンにされたこと。 アキラが今でもこの胸を執拗に弄る理由。 自分のモノだとここを齧り舐めて吸うのを止めない原因。 おかげでミサキのそこはいやらしく育って、ミサキはここでイカされないと満足出来ない身体にされている。 いつもそこは熱っぼく疼いている。 アキラが毎日吸うから。 オメガ用のメンズブラの意味を知ることになった。 服が擦れて色々マズイので必要なのだ。 まあ、そのおかげで、シンにされた感覚を思い出せなくはなったのだけど。 アキラの感触しかここにはもうない。 アキラの舌の感触を思い出してゾクリとしてしまったことは秘密だ。 自分でも認めたくない。 とにかく、シンとのことは思い出したくはない思い出の1つだ。 そして、ミサキがアルファを憎む理由の1つではある。 先生にメールを入れておいた。 仕事後に会わないかと。 事務所にはいかない。 万が一でもシンと顔を合わせたくないからだ。 先生は今ではゆったり働いているので、夕方は家にいるだろう。 先生は数少ない、夜は家に帰る必要がないオメガなのだけど、それは夜ではなく昼に犯されているからだ。 シンは夜は恋人の元へ帰るから、夜は先生に近付くことはないだろう。 先生の昼のオフィスで先生をどうせ犯しているのだろう。 必要なだけ、好きなだけ。 アルファらしく欲しくなったら好きなだけユキ先生を喰らうのだろう。 それを考えると胸が痛くて苦しくなる。 でも。 ミサキはユキ先生が好きだ。 好きなのだ。 大事な人なのだ。 ミサキは別に絶対に夜家にいる必要もないし、それを強要されたこともない。 まあ、ほぼ毎日抱かれてるが。 先生の家に泊まることもある。 だが、先生と一緒にお風呂に入ろうとしたり、おなじベッドで寝ようとすると、何故かアキラから電話が入る鬱陶しさがある。 特にそれで何か言われるわけではないが、気持ち悪すぎるのだ。 なのでしぶしぶ先生とお風呂やベッドは分けるてるし、先生の家を出たらアキラが待ってて、家まで送られ、直ぐにミサキを確かめるみたいに犯してくるし。 見張られているのだ。 キモイが実にアルファらしい。 自分の持ち物やどこかに何かしらの発信機が無いかを調べて、携帯のGPSを無効にしたりしてもどうにもならない。 生霊になって取り憑いてるんじゃないかと思ってしまう。 家に帰らない限り、アキラに犯されることはない、が、それでもミサキがやはり家に帰るのは。 嫌な事実だが。 ミサキにもアルファが必要だからだ。 今日もユキ先生に会えたとしても、家に帰るだろう。 そして。 またアキラに犯される。 ベッドに潜り込めばそれを見越して部屋にアキラが入ってくる。 言葉はもうない。 伸ばされるアキラの腕を拒むだろういつも通り。 でも、触れられたなら。 溺れるだろう。 今夜も。 何度も何度も中に出されて。 イキ狂う。 ベッドの中だけはアキラは饒舌だ。 ミサキに絶えることなく話しかけ、返事の代わりに声を上げさせ続けるだろう。 ミサキは頭を振った。 あんな男のことは考えるな!! その時だった。 ミサキはシンを見てしまった。 通りを歩く人達の中に。

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