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第88話
シンがベータの乳首の上につけた歯形を舌でなぞった。
こそげとるように。
それは自分の身体にもあるものに似てた。
所有の印だ。
アキラが飽きることなくつけ続けるあの跡。
ああっ
だめぇっ
ベータが掠れた声で喘ぐ。
突き放そうとするが、力無い腕にミサキは笑う。
まあ、本気で抵抗してもミサキは余裕で抑え込めるが。
ベータがオメガに身体能力で勝てるわけがない。
だが、今与えられる快楽に、シンに散々教えこられた身体は抵抗出来ないだろう。
オメガのように、このベータの身体は快楽に弱い。
可哀想に。
せっかくベータでいられたのに。
舌で乳首の先を丹念に押し潰しながら、もう片方を指で弄ってやった。
指で摘んで優しく擦り合わせてやれば、ここもぺニスのように感じると知ってた。
吸われたいだろう、と思って吸ってやる。
突き放すようだった腕が、ミサキの頭を甘えるように抱え込む。
そうするようになるまで、教えこまれたのだ。
もっと欲しいと思わさせられるほど、シンはこのベータの乳首を舐めて吸って教え込んだのだ。
時間をかけて、自分が満足を得られはしないベータの身体を支配するためだけにシンはそうしたのだ。
それは。
決して愛されないと知ってて、ミサキを抱くアキラと似ていた。
哀れなアルファ達。
「ヤダ・・・やめぇっ!!ああっ!!」
それでも抵抗しているつもりのベータが、悲鳴のような、喘ぎ声をあげる。
そのくせ無意識に、体は欲しがり胸を突き出し、ミサキの頭を抱え込んでいて。
もう腰が揺れはじめているのをミサキは気付いてきる。
穴が疼いているだろう。
オメガと違って濡れはしないが、そこはシンによって性器に変えられているから。
抱かれることに慣れきったベータの身体は反応していた。
そう、地味な平凡な男の顔が、淫らに色づくのはミサキでもクるところがあった。
でも。
まずは男に戻してやろう。
乳首や穴で感じさせられて、「女」にされたと思いこんでいるこのベータに気付かせてやる。
ミサキはゆっくり顔をあげた。
ミサキを見下ろす、潤んだ目と真っ赤な顔。
困惑と羞恥。
ベータはたまらなくエロかった。
成程。
アルファ達の気持ちはわかる。
これは支配したくなる。
だが、ミサキがしてやりたいのは解放だ。
アルファがベータを抱きたがるのは、本来そうでないモノを「女」や「オメガ」のようにしたいからだ。
元々男を好むベータをアルファは相手にしない。
男には興味がなかった男を、女やオメガのように感じるまでにするのが最高の支配欲の満たし方なのだ。
最低な遊びなのだ。
後ろを穿たれ、ソコでイカされつづけ、乳首でもイカされ続けたなら、本人もそう思い込んでしまう。
だが違う。
それは単に身体が快楽を感じただけだ。
ほら、ミサキを見る目には欲望がある。
怯えているけど確かに。
ミサキは笑った。
その肉食獣の微笑みに、ベータはさらに怯えて身体を戦かせた。
その震えが良かった。
「シンに騙されてるよ。アンタ【女】になったんだって言われてるでしょ。もう女を抱くことなんか出来ないって。そんなことないよ。アンタはずっと男だし、シンに後ろでイカされててもちゃんと男だよ。アルファは嘘つきだよ。ずっとアンタに色んな嘘をついてきたんだよ、シンは」
ミサキは真実を囁いてやった。
「アンタを【女】にしたからアンタは他の誰ともセックス出来ない、といいながら自分はまだ幼いオメガと楽しんでたんだよ。シンは。アンタを【女】だと言って抱きながら、自分はオメガの孔を楽しんでたんだよ。アンタはシン以外しらないのにね。シンの為に抱かれてやったんだろ?アンタは男で欲しいのは女やオメガなのにね、本当なら」
ミサキはあえてそこを触らなかった。
本来使うべき場所。
硬くなってるはずだ。
ミサキの肉体が、オメガの肉体が甘やかに匂っているはずだ。
ミサキのフェロモンの匂いが分からなくても、ミサキそのものがフェロモンなのだ。
「可哀想に。前使ったことないんだろ?アンタのココは、包まれて絞られて、気持ちよくされるためにあるのに」
ミサキはベータの胸に顔を寄せるようにしながら言う。
服をあえて調えてやる。
自分から来させないといけない。
腹の減った男にして、ミサキを喰いにきたところを骨まで食らってやる。
シンから奪う。
ミサキの孔で、男に戻してやろう。
男としてミサキに狂わせて、シンでは満足出来ないようにしてやる。
「シンはアンタを女の子にしといて、オメガで楽しんでたんだよ?アンタはちゃんと男なのに。分かってるでしょう?」
ミサキは服1枚脱ぐ必要もない。
シンを信じ切っていたこの哀れなベータに傷をつけた。
その傷口から侵入してやればいい。
信じれば信じてただけ深い傷は、どこまでも深くミサキに入り込ませるだろう。
「シンを愛してて、信じていたから。【女の子】にされるのを許したんでしょ?可哀想・・・」
ミサキの同情は嘘ではなかった。
可哀想なベータ。
その目に生まれているのは絶望だ。
彼は元々。
そうじゃなかった。
シンを愛していたから、本来の自分を捨てたのだ。
それは快楽のためではない。
ないのだ。
シンは支配に快楽を使ったが、彼がそれに従ったのは快楽のためじゃない。
普通の優しい男が、アルファを愛したからだ。
「オレならアンタを戻してやれる。シンがアンタを抱いたくらいで変えられたと思っているなら間違いだ」
キッパリミサキは言い切った。
そんなのはアルファの傲慢で欺瞞だ。
「元に戻ろう。アンタは抱く方だよ。抱かれる気持ち良さを知ってはいても」
ミサキは囁いた。
傷ついたベータは泣いていた。
ベータだったことがえる、普通の少年だったことがあるオメガだからこそ、ミサキにはその気持ちが分かった。
抱かれることなんて考えたことも無かった人間がそうなるためには。
そうしたのは。
生半可な決意ではなかっただろう。
シンのために。
シンだから。
愛ゆえに。
でもシンは、オメガを抱いていたのだ。
「可哀想・・・」
ミサキの同情は嘘ではない。
嘘では。
だけど。
「オレを抱いて、元に戻ろう?」
これは嘘。
オメガを抱けば。
さらに深い闇におちるだけ。
このベータがそこに堕ちるなら。
シンはもっと深く闇に堕ちる。
そしてミサキも。
だけど。
ミサキの復讐心は満たされる。
それで良かった。
壊れたベータが泣きながらミサキを見つめる。
後少し、ミサキはそれが分かった。
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