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第101話
ミサキは溜息をついていた。
仕事帰りにカフェにいた。
コーヒーでも飲みながらのんびりしたかったのだ。
アキラと話せばなにかふんぎりがつくかとおもったけれど、何も変わらなかった。
いや、何もではない。
ミサキはこのところ、少なくともアキラに罵声を浴びせてないし、殴ってないし、抵抗らしい抵抗はしていない。
でも、それだけだ。
アキラへの憎しみを捨てることは出来ない。
勝手にアキラに犯されたこと、繋がれたことをゆるすわけにはいかない。
許さなくてもいい、とユキ先生は言ってくれた。でも、その先にあるものは?
どうやったならミサキとアキラはここから出ることができる?
このまま、囚われていたくはなかった。
ミサキは自分だけでなく、アキラもこの檻の中から出すことを願っていることにまだ気付かない。
だけど、どうすればよいなのかは分からないまま、相変わらず言葉なく抱かれる日々だ。
まだ物語も書けないし、本も読めない。
仕事はたのしい。
だが。
自分が壊れてきているのだと言う実感はミサキにもあった。
疲れてしまったのだ。
憎み繋がれ閉じ込められていることに。
この繋がりはミサキが生きていく上で断ち切れない。
ミサキにはアルファが、番が必要なのだ。
ミサキはまた溜息をつく。
手詰まりだ。
そんな時、電話がかかってきた。
知らない番号だったが、会社の携帯だったから出ることにした。
仕事柄、色んな人間からの情報収集が必要なので、知らない人間からかかって来ることもある。
だが。
「やあ、ミサキ」
電話の声にミサキは驚いた。
ミサキは驚く。
だってそれは。
シンの声だったからだ。
よくもまあ、ヌケヌケと。
ミサキはすっかり呆れてしまった。
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