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第105話

「ミサキ・・・オレとセックスしよう」 シンの言葉はストレートだった。 「ヤらせてよ」 低くシンは笑いさえした。 シンの大きな身体がミサキの隣りに座る。 この部屋の不必要な程大きいソファの意味を悟る。 ここは。 シンがオメガとする為の部屋でもあるのだ。 そしてその相手はおそらく、ユキ先生。 シンは今では抱いてるオメガはユキ先生だけだろうから。 抱いたオメガにアルファは執着を持たずにはいられない。 番じゃなくても、だ。 それはアルファの精神を削る。 まして、他のアルファに執着をもつオメガを奪われるなど。 だから、シンは抱いてきたオメガをその番のアルファ毎消し去っている。 それを、ミサキは知ってはいた。 アルファの執着の恐ろしさを。 そして今。 ミサキは知る。 オメガもまた。 抱かれたアルファに反応するのだと。 番じゃなくても、だ。 身体が熱くなる。 シンに弄られた場所が熱くなる。 シンに舐められ齧られた乳首が、またそうして欲しいと疼いていた。 ミサキの身体は、シンをアルファだと認識していた。 番ではないのに、それでも、ミサキの身体は受け入れたことのあるアルファとして、シンの身体に反応していた。 シンは知っていたのだ。 ミサキは最後まではしていないけれど、ミサキは'承諾」をシンに与えたことがある。 それによって、シンとミサキには繋がりのようなモノが出来上がっているのだ。 色んなオメガから承諾を得て、そのオメガを犯してきたシンだからこそ知っていることだった。 ミサキの身体が熱くなる。 乳首が服の下で尖り、アルファに舐められ噛まれ、吸われたいとジンジン疼く。 アキラに抱かれる寸前のように。 「承諾がいるんだよ、ミサキ。オレとしたいと言って?」 甘えるようにシンが言う。 身体が痺れて動けない。 甘い息が首筋にかかってミサキは震えた。 欲しい。 アルファだ。 ミサキの身体が言う。 孔も欲しがり疼いてくる。 アルファがオメガを欲しがるように、オメガもアルファを欲しがるのだ。 「嫌だ。それに、何考えてんだ。お前の恋人の前だぞ!!」 ミサキはそれでも怒鳴った。 シンとするなんて有り得なかった。 恋人の目の前でオメガを抱こうとするアルファなんて、最悪すぎる。 クソアルファ。 クソ!! 憎しみが勝つ。 「キョウちゃんの前だからするんだろ。前だってキョウちゃん、ミサキとしようとしたら、オレをミサキに盗られるのが嫌で、オレが好きだって認めてくれただろ?ミサキとセックスして欲しくないって言ってくれた。だからまた、ミサキと目の前でセックスしたら、オレを取り戻しに自分の中から出てきてくれる、きっと」 シンは自信たっぷりに言った。 ミサキは目眩がした。 シンの傲慢さと、何より、そこまで愛されているという自信に。 シンはどこにも逃げられない程に恋人を追い詰めておきながら、それでも、恋人が自分を愛しているから取り戻しに来ると疑いもしてないのだ。 なんて。 残酷な。 ワガママな。 吐き気がした。 「誰がお前なんかとするかよ!!」 ミサキは自分の中にある全ての憎しみをシンにぶつける。 アルファ アルファ クソアルファ アルファがいるから不幸があるんだ、と。 「クソアルファ!!お前なんか死んじまえ!!」 それは呪詛だった。 しかもこのアルファは。 こんなに酷いのに、それでも自分が愛されていると疑いもしないのだ。 こんなに酷いくせに、それでも愛されているなんて、許せない。 アルファのくせに!! だけど、シンは笑った。 楽しそうに。 「オレは好きだけどね、お前がね。ミサキ、お前のそういう許さないところ大好きだよ」 シンの笑顔も声も爽やかで、だからこそ気味が悪かった。 「そういうお前だから協力を頼んでるんだよ」 シンは嬉しそうですらあった。 そして、 シンは優しい目をぼんやりとこちらを見て、薄く笑っている魂がないような恋人にむけた。 そして、切なく恋人を見つめたあと、ミサキに狡くて魅力的な笑顔を見せる。 「ミサキ、復讐したくない?」 シンの声は、今までで一番甘かった。

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