111 / 122
第108話
シンはミサキの耳元で囁く。
「シようぜ、ミサキ」
シンの声は。
どんな時もずるくて甘かった。
「いいって言って?」
囁きながら、そっとミサキのシャツを捲り上げ、シンはミサキの薄い腹を撫でた。
そこに自分のが入るのだと教えるように。
昨夜もアキラに腹に形が浮かび上げるほどに突き上げられたことを思い出してしまい、ミサキは喘いだ。
「アキラを苦しめてやろうよ。ミサキが感じて楽しむ度に、アキラは傷つく。ミサキがアキラを嫌おうと、殴ろうと罵ろうと、アキラはもうそんなの何とも思わないんだからな」
シンの言葉はその通りだった。
アキラはミサキに愛されなくても、憎まれていても、もうそこには折り合いを自分でつけてしまっている。
ミサキを手放さないことだけは決まっている。
「ミサキは気持ち良くなるだけで、アイツをズタズタにできるんだよ」
シンはそう言って、ミサキの乳首をシャツの中で見つけ出し、指先で転がした。
ひんっ
ミサキは声を上げた。
アキラ以外にそこに触れたのはシンだけで、アキラはその感触を忘れさせようと必死だったけど、ミサキの身体はちゃんと覚えていた。
これは。
シンの指。
シンの感触。
アキラとは違うから、違うからこそ、感じてしまう。
「可愛いね、ミサキ。そう思ってんのはウソじゃない」
シンは笑った。
「シよう?、ね?ミサキ・・・」
シンの声は甘くて、指で擦り合わされる乳首も甘い痛みで。
アキラとは違うその指にミサキは酔った。
でも、それをぼんやり見ているシンの恋人の存在をミサキが忘れられるわけもなく。
思わず目をやると、シンの恋人はニコニコ笑って2人を見ていた。
ミサキはシンへと目をやった。
シンは薄く笑ってた。
シンには確信がある。
ミサキを彼の目の前で抱いていれば、恋人が自分の殻から出てくると。
「ミサキ、させて。お願い」
シンがゴリゴリとミサキの腹に、ズボンを履いたまま、勃起したペニスを擦り付ける。
ミサキの孔がそれを欲しいと、疼きだす。
「ミサキ・・・お願い・・・」
甘く囁いて乳首を弄っているくせに、目だけは恋人を追っているシンは相変わらず酷くて、ずるくて、正直で。
ミサキは満たされたかった。
傷付けられてきた心を、何かで満たしたかった。
穴の空いたコップには何も貯まらない。
ミサキのセックスの快楽は、今まで何の意味もないものだった。
でも、復讐が孔を塞いでくれたなら。
ミサキは快楽に何かしら意味を見つけ出せる気がした。
セックスがしたかった。
本当の意味で。
愛など知らない。
でも。
復讐ならその意味がわかる。
ミサキは決めた。
決めてしまった。
「シて・・・・」
小さな声を、シンは聞き逃さなかった。
ミサキを肩に担ぎ上げた。
そして、恋人へ声をかける。
「キョウちゃんもおいで・・・今からミサキとセックスするから。それが嫌なら、オレを取り戻しにきてね?」
ミサキを片手で抱え、もう片方の手で恋人の手を引き、シンは寝室へとむかう。
ミサキをそこで抱くために。
ともだちにシェアしよう!